経営悪化が囁かれているAMラジオ局の多くが消滅していくことが確実となった。
関東地区の老舗AMラジオ局であるTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送、ラジオ日本の4局が、FM局に移行することを検討しているのだ。
都心の場合、どうしても高層ビルが電波をさえぎって聞きにくい事情から、営業的にも苦戦を強いられてきた。
「聴取率69回連続トップのTBSラジオや、フジ・メディア・ホールディングスの傘下にあるニッポン放送は、ここ数期は黒字を確保している。しかし、親会社がなく、はぐれ鳥といわれている文化放送は4期連続の赤字。日本テレビが親会社のラジオ日本も’12年3月期で赤字になっている。昨年6月に若い社長を日テレから迎えたが、’13年3月期も厳しい決算内容が見込まれている。AMラジオ局も、今後のことを考えるとやはり『媒体変換』をすべきではないかと総務省が判断した」(ラジオ業界関係者)
FM移行にともない活用を考えているのは、テレビのデジタル化で空いた『V-Low』と呼ばれる電波帯。ラジオ業界はこの電波帯を使ったデジタル化を検討し、災害対策に役立てようという構想である。
ただ、AMラジオ局のFM化でも問題はくすぶっている。
FM局自体も経営不振に陥っているのだ。それはJ-WAVEの株移動によく表れている。
昨年6月、4.85%保有しJ-WAVEの株主2位だったニッポン放送が、いっきに買い増しして12%まで増やしたのだ。
「J-WAVEは’11年3月期あたりから赤字になり始め、当時の会長が辞任。だが、そのあとも景気は好転せず、現在のように第三者のラジオ局が経営に介入することになった。FMラジオ業界も完全な構造不況業種です」(前出・ラジオ業界関係者)
AMラジオ界では、TBSラジオに久米宏、大沢悠里、森本毅郎、文化放送ではみのもんたらロートル勢が長年君臨してきた。
FM変換化の際、局としても世代交代を急ぎたいところだが、既存勢力の抵抗もあり、すんなりいきそうもない。
課題は山積みだ。