忘れられた存在として、逆にクローズアップされる氷河期世代。現在とは比べ物にならないくらい大変だった就職活動を起点とする苦労話。氷河期世代なら何度もしたことがある話ですが、そろそろやめたほうがいいかもしれません。みていきましょう。
人生、ずっと低空飛行だよ…大卒でも就職にあぶれた、40代・50代でも非正規の氷河期世代
バブル崩壊後の1993年から2005年卒業で就職活動に差し掛かった年代である就職氷河期。2023年現在、40代~50代前半の人たちが、それにあたります。当時は「最近は、就職活動も大変のようだね」くらいにしか語られませんでした。なかでも就職が厳しかったのは2000年。この年は大卒の求人倍率が唯一、1.0を切った年でもありました。
大学4年間の学費は、国公立大学で約250万円、私立大学では文系が約400万円、理系で約550万円。さらに実家を離れ下宿となると仕送りもプラスされ、親にとっては結構な負担。さらに、奨学金を活用しての進学の場合、大学を卒業したら基本的に返済がスタート。月平均1.5万円ほどの返済ではありますが、「大学を卒業したのに職がない……」という状態では一大事です。
しかし、それ以上に日本経済も元気がなかった頃でしたから、就職の厳しさはそれほどクローズアップされることはありませんでした。就職にあぶれ、非正規社員として社会人に。正社員になるタイミングを逃し、現在に至る人たち……。
ーー人生、ずっと低空飛行だよ
そんな冗談が板についています。もちろん、希望した会社に就職し、出世街道を歩んだ勝ち組もいます。希望した会社ではありませんが、何とか正社員として就職できた人たちも、入ったのはいわゆるブラック企業ということも。いまのように、ハラスメントへの意識も低い時代でしたから、「いやなら、辞めちまぇー」と怒号の飛ぶなか、何とか喰らいつこうと我慢の日々を過ごしました。しかし耐えきれず、せっかくの正社員の座を下りてしまう人も。その後、非正社員として現在に至る人もいれば、その時のハラスメントがきっかけに、心を病んでしまう人も。
そんな氷河期世代がクローズアップされるようになったのは、最近のこと。40~50代になっても低空飛行を続ける氷河期世代の人たちに対して支援の必要性が訴えられるようになり、少し、光が当たるようになったのです。
俺たち苦労したよな…何かと昔話をしたがる「氷河期世代」の呪縛
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、大卒サラリーマン(正社員)の平均給与は月収で40.0万円、年収で658.4万円。20代前半で月収23.5万円、年収348.6万円だった給与は、年齢を重ねるごとに上昇し、50代後半で月収52.5万円、年収857.6万円でピークに達します。
一方、大卒の非正規社員の平均給与は月収で28.9万円、年収で418.5万円。20代前半で21.4万円、年収293.8万円だった給与ですが、50代になっても月収30万円に届かず、年収は50代後半にしてやっと400万円に到達します。
正社員と非正規社員の給与差が一番広がるのは、40代後半~50代前半。ちょうど氷河期世代にあたります。40代後半正社員の平均年収は756.4万円。対して、40代後半非正規社員の平均年収は352.5万円で、正社員の46%。そして50代正社員は年収832.7万円。対して、50代非正規社員はの平均年収は364.8万円。40代後半よりも低い、正社員の43%です。
勝ち組と負け組の差も大きい……氷河期世代には、そのような一面もあります。ただ勝ち・負けどちらにせよ、多くの人が今では考えられないような苦労をしてきたわけです。そのため、事あるごとにこんなひと言を言いがち。
ーーあの頃は、大変だったよな
ーーいまは、あの頃と比べて恵まれてるよ
ーー最近の人はラクし過ぎ。もっと苦労しなきゃ
40代後半から50代前半の上司。昔を懐かしむ苦労話は、もはや常套句。「耳にタコができた」と嫌悪感を覚える若者世代も多いようです。
ーー氷河期世代、どれだけ同じ話をするんだよ
ーー氷河期世代の苦労話……何週目ですか?
同じようなことを言った覚えがあったり、若手社員にそう思われていると心当たりがあったりする氷河期世代も多いのでは。そろそろ氷河期世代の呪縛から解放されてても良い時かもしれません。