固定資産税の請求はショックそのもの。実は、固定資産税は地域によって税率も特例もバラバラ。減免措置も間違いもあるのに、国は例によって積極的には教えてくれない……。
自分から動くしかない
「固定資産税 納税通知書」を見て、今年も高い税金を払うのかと、肩を落とした人も多いだろう。自分で申請が必要な相続税とは違い、固定資産税は市町村(東京23区は都)から言われるがままに税金を納めるしかないと思いがちだ。
しかし実は、自分から動くことで、固定資産税も減らすことができる。
「固定資産税がかかる土地の価格を3割下げられた例もある。もし気づかなければずっと高い税金を払っていたはずです」(税理士・黒木貞彦氏)
では、どうすれば固定資産税を減らせるのか。そのためには、まず固定資産税の仕組みを理解する必要がある。
固定資産税は、1月1日に建物・土地を持っていた人にかかる税金だ。今年の1月1日に土地を持っていた人が2月に亡くなった場合は、相続人が固定資産税を納める。
税額計算のもとになるのは、固定資産税評価額だ。これは実際の売買の価格ではなく、税金をかけるために設定された金額だ。この固定資産税評価額に一定の税率をかけると、固定資産税の金額が計算できる。
意外と知られていないが、この税率は自治体によって違う。
「固定資産税の税率は、自治体が設定します。東京都も含めて9割の自治体では、1.4%の標準税率を採用しています。しかし、1.75%の税率を設定する北海道三笠町のように、税率が高い自治体もあります」(税理士・星野純子氏)
支払うべき税金はこれだけではない。市街化区域では、最大0.3%の都市計画税も上乗せされるのだ。簡単に言えば、住宅や商店・ビルが立ち並び、農地や森林がない地域は、税金が高くなる。
課税明細書をチェック
実際に納める税額については、納税通知書に記載されている通りだ。
だが、税金を減らしたいならば、見るべきものは納税通知書ではない。同封されて送られてくる「課税明細書」こそチェックすべきだ。(下の図を参照)
課税明細書には、土地や家屋の所在のほか、土地の面積や価格など細かい数字が並ぶ。毎年確認をしているという人は多くないだろう。
まず家屋(建物)については、毎年、自動的に固定資産税評価額が下がる仕組みになっている。
「純木造なら22年で価値がゼロに近づきます。長く住めば住むほど、家にかかる固定資産税は勝手に安くなっていくのです」(前出・黒木氏)
自分の力で固定資産税を減らせる可能性があるのは、土地についてだ。上の図を見てほしい。税金を減らすために見るべきポイントは3つある。
1つ目は、現況地積(A)だ。これは市町村が把握している面積で、登記の面積とは別ものだ。固定資産税は、この現況地積に対して課税されるが、この面積が間違っていることがある。
「昔からの土地は、正しい実測がされていない可能性があります。正確な面積を測りなおした結果、課税明細書にある現況面積より狭いとわかれば、税金は安くできる。
公用道路など、本来は非課税の土地が、現況面積に誤って含まれていないかも確認したほうがいい」(前出・星野氏)
2つ目のチェックポイントは、価格(B=固定資産税評価額)を現況地積(A)で割って出る1平方メートルあたりの固定資産税評価額だ。
これを周辺の土地と比べたときに、金額に大きな差があれば、土地の評価額が間違っている可能性がある。
では、どうやって周囲の土地の固定資産税評価額を確認すればいいのか。
「固定資産税の縦覧という制度があります。東京都の場合、例年4月の初めから7月の初めまでの間なら、各区にある都税事務所で、他の土地の固定資産税評価額を調べられます」(税理士・森田純弘氏)
もしこの期間を過ぎてしまったとしても、固定資産税の誤りに気づく方法はある。
固定資産税評価額は、公示価格の70%を目安に設定されている。よって、公示価格に0.7をかけた価格と、課税明細書にある価格(B)を比べれば正しい固定資産税評価額がわかる。
公示価格は、国土交通省の「土地総合情報システム」というWEBサイトで調べることができる。簡単なので、今すぐ試してみよう。
さらに、土地の状況が価格(B)に反映されておらずムダな税金を払わされていることもある。
「たとえば、斜面になっている『がけ地』が抜けていることがあります。これに気づけば、2~3割評価額を下げられます」(前出・黒木氏)
最後にチェックしたいのは、課税標準額(C)に減免措置が適用されているかだ。
住宅が建っている土地は、200平方メートルまで小規模住宅用地(D)という減免措置によって、固定資産税がかかる課税標準額が6分の1(都市計画税は3分の1)になる。
実は課税ミスだらけ
しかし、自治体の課税ミスによって、負担調整が適用されていないことがあるのだ。こうした課税ミスは、大きな問題になっている。
「埼玉県新座市では、’14年の調査で、300件の課税ミスが発覚しました。調査のきっかけは、新築当初から小規模住宅用地の減免が適用されていなかった物件が判明したことです。
結局、この家に住んでいた夫婦は20年分の固定資産税約240万円を取り戻すことができました」(前出・星野氏)
総務省の調査では、約97%の市町村で固定資産税のなんらかの課税ミスが発覚している。基本は疑ってかかるべきなのだ。
固定資産税を減らせる減免措置は他にもあるが、自分で申請しないと、適用されないものには注意したい。
たとえば、耐震改修を申請すれば、翌年の固定資産税が半額になる。また、バリアフリーのリフォームでも、65歳以上や要介護(または要支援)の人が住む場合、翌年の固定資産税を3分の2に減らせる。
さらに、固定資産税の減免には自治体ごとに違いがあるということも知っておきたい。耐震改修の場合、東京23区内なら120平方メートルまでの床面部分は固定資産税が全額免除される。
ほかにも、大阪市なら、夫と死別して、子どもがいる寡婦は固定資産税が半額になる制度がある。必ずチェックをしておこう。
では、課税ミスによってムダな固定資産税を払っていると分かった場合、どうすれば具体的に税金を安くできるのか。
そのための手続きが「審査」だ。各自治体に設置された固定資産評価審査委員会の事務局に審査申出書を提出し、認められれば、価格を修正してもらうことができる。ただし申請するタイミングには注意が必要だ。
「固定資産税評価額は3年に1度の評価替えがあり、原則この年だけ価格の修正を受け付けます。
もし今、評価の誤りを見つけたら、不動産鑑定士に頼んで調べてもらい、評価替えの年である令和3年の納税通知書をもらった日から3ヵ月以内に審査の申し出をします」(前出・黒木氏)
ただ払うだけだと思いがちな固定資産税にも、実は減らせるワザがある。今年届いた納税通知書をよく見ておけば、未来の損は減らせる。