スマートフォンの普及と相まって、運転中に電話をかけたりカーナビを操作するなど、いわゆる「ながら運転」を原因とする交通事故が増加したことを受け、警察庁発案の罰則を強化した「改正道路交通法」が、12/1から施行された。従来は、違反そのものに関しては「軽微な違反(反則行為)」とされ反則金+基礎点数で済んでいたが(これに起因する死傷事故は別問題)、改正後はただ通話していたケースでも反則金、基礎点数ともに3倍、さらに、「交通に危険を生じさせた場合」は反則金制度は適用されず、否応なく免許が停止されるというから、もはや他人事じゃない。これを機に、その厳罰化の中身を、もう1度、おさらいしてみよう!
「携帯電話使用等(保持)」と「携帯 電話使用等(交通の危険)」の違い、とは?
まずは、この6月の「改正道路交通法」公布を受けて、9/19に警察庁が全国の都道府県警及び関連各機関に向け発した、「道路交通法の一部を改正する法律の施行に伴う交通警察の運営について」という通達の「ながら運転」関連の定義を見てみよう。(要約)
「道路交通法の一部を改正する法律の施行に伴う交通警察の運営について」
★「携帯電話使用等」
自動車又は原動機付自転車の運転中に携帯電話等の無線通話装置を通話のために使用したり、
携帯電話やカーナ ビゲーション装置等の画面を注視したりする行為
・「携帯電話使用等(保持)」
無線通話装置を通話のために使用し、又は画像表示用装置を手で保持して これに表示された
画像を注視する行為
・「携帯 電話使用等(交通の危険)」
道路における交通の危険を生じさせた場合
「携帯電話使用等(保持)」違反に関しては、今さら説明する必要はないだろう。運転中にスマートフォンやカーナビを操作したり通話したりする行為を、取り締まり中の警察官に目視された場合に成立し、従来の3倍の罰則が適用されることになる。
ところが、いまいちわからないのが「携帯電話使用等(交通の危険)」違反の定義だ。
この通達によると、その定義は、ただ「道路における交通の危険を生じさせた場合」とあるだけで、その具体例などは一切記されていない。なんとなく「ながら運転によって交通事故を起こしてしまった場合?」という想像はつくが、本当に「道路における交通の危険」=「交通事故」と解釈してもいいのだろうか。
ちなみに、今回の改正に伴い、道路交通法そのものに「道路における交通の危険を生じさせた場合」の規定がこう記されている。
道路交通法第103条二
携帯電話使用等対策の推進に関する規定の整備
1 ロ自動車等を運転する場合において、携帯電話使用などによって道路における交通の危険を生じさせる行為をした者に対する罰則を引き上げるとともに、同行為を交通反則通告制度(反則金制度)の対象となる反則行為から除外する。
2免許の効力の仮停止に関する規定の整備
1 ロの行為をし、よって交通事故を起こして人を死亡させ、または傷つけた場合について、運転免許の効力の仮停止の対象とする。
つまり、「交通の危険を生じさせる行為」をすると反則金制度から除外され、刑事罰(1年以下の懲役または30万円以下の罰金)が科せられる。さらに、その行為を起因とした死傷事故を起こすと、免許停止の対象となるということらしい。
だが元々、死亡事故を起こすと悪質でない場合でも13点という付加点数が加点されるわけだから、「ながら運転」だろうがなんだろうが、確実に免許停止以上となる。何を今さらという気もするが、たぶん、基礎点数を6点とすることで、付加点数に関わらず「免許停止」決定!
ということなのだろう。さらに、傷害事故に関しても、被害者の治療期間に関わらず(例:治療期間が15日未満であれば3点)、否応なしに6点=免許停止処分を科すということだと思われる。つまり、従来は1点or2点で済んだ「ながら運転」自体の罰則の重さを強調したかったわけだ。
となると、「交通の危険を生じさせる行為」は少なくとも死傷事故に限定されるわけではないことになる。事実、上表にあるように、「携帯電話使用等(交通の危険)」に科せられる基礎点数は無条件に6点=免許停止となっている。では、死傷事故以外で「交通の危険を生じさせたか、そうでないか」は一体、どのように判断されるのだろうか。とあるメディアによると「携帯電話使用等(交通の危険)」=「携帯電話での通話や注視によって交通事故を生じさせる違反」と限定しているが、例えば、基本的に行政処分を受けない物損事故でも「携帯電話使用等(交通の危険)」違反となるのだろうか。この辺は後日、警察に取材する予定だ。(答えは続報にて)
いずれにしても、罰則がどうあれ、「ながら運転」は言うまでもなく極めて危険な行為であることに変わりはない。これからは、ただの「不注意」では済まされないということを改めて認識してほしい。