ものづくりの原点誇り 釜石「橋野高炉跡」世界文化遺産推薦

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の推薦が発表された17日、遺産を構成する「橋野高炉跡」がある釜石市では、登録実現への期待が膨らんだ。東日本大震災からの復興に取り組む「鉄のまち釜石」。関係者からは、日本のものづくりの原点になった誇りを再確認する声が相次いだ。
 野田武則釜石市長は同日、記者会見し「三陸沿岸地域の復興の後押しとなる」と歓迎した。
 復興に向けた市のキャッチフレーズは「撓(たわ)まず屈せず」。失敗を繰り返し、近代製鉄に成功した先人の不撓(ふとう)不屈の精神は「明治、昭和の大津波、太平洋戦争時の艦砲射撃で壊滅的な被害を受けても、その都度立ち上がった市民に受け継がれている」と語る。
 市長はまた、釜石の原点を知ってもらうため、11月に橋野鉱山インフォメーションセンターを開設、シンポジウムも開催する考えを示した。
 「釜石固有の資源を地道に発信してきたことが認められた」と喜ぶのは、新日鉄住金釜石製鉄所OBで市の「鉄のふるさと釜石創造事業実行委員会」の大滝粂夫会長(70)。近代製鉄発祥150周年の2007年から釜石と鉄の歴史を見直す活動に取り組む。
 日本の近代製鉄の歴史は、北九州市の官営八幡製鉄所が起源とされた時代があった。活動を通じて「釜石での技術が八幡製鉄所開業に生かされたことが明らかになり、今回の遺産に加わることができた」と強調する。
 橋野高炉跡の地元の橋野町青ノ木地区は過疎化が進み、暮らしている14世帯27人のほとんどは70歳以上。高炉跡近くで食堂「峠の茶屋」を経営する小笠原静子さん(71)は「単なる観光地ではなく、豊富な食材など多様な魅力に目を向けた地域づくりをしてほしい」と要望した。

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