埼玉から日本のソウルフードへ―。飲食チェーン店「山田うどん」などを展開する山田食品産業(所沢市)が、新たな宣伝手法や施策を取り入れながら、着々と全国のファンを増やしている。「時代に応じた経営を展開していきたい」と山田裕朗社長は意気込む。
富士見市で4月8、9日の2日間、アイドルグループ「ももいろクローバーZ」(ももクロ)のライブが開催され、全国から約4万人のファンが駆け付けた。
そんなファンをもてなそうと、会場近くに設けられた出店ブースには、約20店舗が集結。ひときわ目立つ長蛇の列をつくったのが「山田うどん」だった。仙台市の会社員男性は「ライブで、山田うどんを知った。今では、すっかり大ファン」と話した。
同社が、ライブの出店に携わったのは約4年前から。偶然ラジオで聴いたももクロメンバーの自社商品の話がきっかけで、営業企画部の江橋丈広部長(45)が、マネジャー宛てに手紙を書いたことから始まった。「居ても立ってもいられない一心で手紙を書いた」。現在、同社はラジオの文化放送で、ももクロメンバーがパーソナリティを務める番組の冠スポンサーにもなっている。
冠スポンサーでありながら、番組間の宣伝CMは一切入れていない。その代わりに番組内で、メンバーが商品を試食するというユニークな宣伝手法を取る。江橋部長は、番組出演もしており、同社の広告塔としての役割も担っている。
約170の既存店は、県内の幹線道路沿いなどに立地しているものが多く、メニューは、麺類や丼ものが中心。しかし今年、既存店の性格とは異なる店舗が誕生した。
1月、東京都品川区内のオフィスビルに、「山田うどん食堂」を開業した。自動車を利用しないオフィスで働くビジネスマンが対象だ。3月には、越谷市内の既存店をとんかつ店に改装した「かかし乃」をオープン。うどん、とんかつセットは1千円以内の価格設定とし、ご飯のお代わりを無料にした。両スタイルの店舗とも、販売状態や立地の条件を見極めながら、関東地方で拡大を進めていくという。
同社は、リーマンショック後に業績が落ち込み新規出店を停止。以降は、店舗の閉鎖や仕入れコストの削減など経営改善に取り組んできた。最近では、業績が回復しつつある。山田社長は「今、必要なのは既存の形に捉われないこと」と柔軟な発想の重要性を説く。新生山田食品産業の挑戦が始まっている。