ようやく廃止、都立高の「男女別定員制」…かつて「女子は私立で男子は公立」のすみ分け

[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「男女別定員」。

 全国の公立高校で唯一残っていた東京都立高の「男女別定員制」が、ようやく廃止されることになった。官民挙げて男女平等が叫ばれて久しいが、いまだに存在していたとは驚きだ。背景を探ると、東京特有の事情が見えてきた。

点数が低くても男子なら合格

 「点数が低い方が合格するのは不平等。頑張った人が報われるべきだ」。今春、都立高に入学した女子生徒は不満を漏らす。

 都立の各高校では長年、全体の定員の枠内で、男女別の定員を設けてきた。募集時に公表し、ほとんどの学校で女子より男子を多く受け入れ、合格点は男子の方が低くなる傾向があった。2021年度入試では、定員制がなければ合格していた生徒は約2万人の受験者中786人いて、女子が691人を占めた。

 制度の始まりは終戦直後に遡る。1946年に米国の教育使節団が、男子が学ぶ「旧制中学校」と、女子が通う「高等女学校」とに分かれていた公立学校の共学化を勧告。各地の教育委員会は共学化へとかじを切り、都教委も49年に踏み切った。

 しかし、戦前の女子教育は「良妻賢母」の育成を目指し、「家事」「裁縫」などに重きが置かれていた。初年度、入試の点数で一律に合否をつけると、旧男子校に合格できた女子はわずかだった。

 そこで取り入れられたのが、男女別の定員制。当時は現在と正反対に、女子の枠を確保することで、女子を多く受け入れるためのものだった。

東京は私立、特に女子高が多い

 やがて男女の学力差は解消されていき、各地で導入された男女別定員制は次第に廃止されていった。

 ただ、戦後すぐの第1次ベビーブームで人口が急増した東京では、都立と私立の定員を合わせても、高校進学希望者を全て受け入れるには足りなかった。

 1965年度の都立と私立の高校数は計414校。このうち私立は、都立(155校)の1.7倍の259校で、内訳は歴史あるミッション系が中心の女子高113校に対し、男子高72校だった。

 都教委は、72年に私立の中高校で作る団体との間で協議会を設置。以降、公私の間で入学させる生徒数を調整するようになる。協議の場では、都立より多くの生徒を受け入れてきた私立側の意見が尊重され、女子高が多いという事情も考慮された。

 「女子は私立で多めに。その分、男子は公立で」。いつしか、そんなすみ分けが定着し、定員制は維持されてきたが、それは進学率を上げようと男子を多めに取ろうとする一部の都立高にとっても都合のよいものだった。

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