よくあるマンション販売予告募集の手口にだまされない法

■販売予告広告は会員募集のツール
マンション販売のとっかかりは、かつては折り込み広告や投げ込みチラシ、電柱広告、捨て看板だったが、今は完全にネット広告が主体となった。ただしエリアを絞ってピンポイントで狙う折り込みや投げ込みチラシなどは今も盛んである。例えば新築マンションを販売しようとした場合、客となりそうな周辺の賃貸マンションや社宅などに絞ってチラシを入れるのだ。
投げ込みチラシには、ネット広告に出さないか、出す前の小規模マンションや中古のリニューアル物件などもあるが、だましも多いので注意が必要だ。チラシ広告にも共通するので、マンション広告の主戦場であるネット広告の注意点を見てみよう。
マンションを探すときはエリア、価格帯、間取りの3点に絞って比較する。エリアは、必ず近くの公園や由緒ある建物などムードあふれるイメージ写真が載っている。本気で住み替えるのなら、物件ごとに現地を見るのが鉄則である。自然豊かな公園と思って行ってみたところ、ビルの日陰で高速道路の騒音がひどく、治安も悪いというのはよくあることだ。
問題は価格に関する記述で、明記してあるものといないものがある。なぜ、価格を明記してない広告があるのか。建物が完成しているか、実物に近いモデルルームができていないと、法律で価格を発表できないからだ。なぜ、正式な価格も発表(予定価格を出すことはできる)できないのに広告を出すのか。
それは、いわゆる予告広告というもので、顧客情報の取得を狙ったものだ。詳しい資料を送ることを条件に、そのデベロッパーの会員を募集し、職業、年収、希望エリア、希望間取り、購入希望価格などの項目を記入させるのだ。
予告広告は、実際の販売広告の予告には違いないが、この会員募集の勧誘ツールでもある。もちろん、会員になれば狙った物件の情報(広告情報だが)が、他者に遅れず確実に入手でき、会員にもメリットがある。本気で住み替える気があるなら、個人情報など気にせず、大手マンション業者全社の会員になるくらいでないと、情報に乗り遅れる。
■品薄感を演出する小出しの販売計画
会員になるとこれでもかと資料が送られてくる。ここで、まず注意するのは、施工業者だ。スーパーゼネコンの5社(大成、鹿島、清水、竹中、大林)はいいとして、準大手・中堅ゼネコンの評判くらいは調べておこう。中には再建途上の業者もある。必ずしもダメなわけではないが、松竹梅でいうと、金融支援を受けた会社には、松もあるが梅も多い。
次に注意すべきことは、第一期分譲、第二期分譲などと小出しに分けて売り出す販売計画だ。狙いは供給を絞って品薄感を演出し、売りにくいものから売ることである。例えば、低層階や北向きの部屋などを先に売り出す。また、「即日完売!」も、予約を受け付けただけでも売れたことになるし、誰が予約したかもわからない。そのまま鵜呑みにすべきではない。
不動産に掘り出し物はない。掘り出し物は一般人が目にする前に業者やセミプロ的な投資家が攫ってしまう。だが、外れは確実にある。ババを掴まぬためには、情報収集と多くの物件を自分の目で見ることだ。
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一級建築士、ホームインスペクター 市村 博
建設会社を経て、2002年から消費者に真実を伝えるセカンドオピニオンとして「住まいと土地の総合相談センター」を主宰。
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一級建築士、ホームインスペクター 市村 博 構成=野口 均

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