アウトレットモールは、もはや買い物すべき場所ではない?フードコートに客殺到の謎

1990年代から地方を中心に増え続け、買い物と観光スポットの両面を併せ持つ施設として人気を集めるアウトレットモール。中でも、全国13店舗、 関東だけで5店舗を有する「三井アウトレットパーク」は最大手として知られる。最近はテレビCMも放送されているので、「行ったことはないが、名前は知っ ている」という人も多いだろう。

千葉県木更津市の「三井アウトレットパーク 木更津」は、首都圏最多の店舗数を誇っており、週末はかなり混雑するといわれている。2012年のオープン時、175だった店舗数は、14年7月の拡大 オープンで248店舗に増大、関東最大級のアウトレットモールとなっている。

今、なぜアウトレットモールが人気なのだろうか? また、ヤンキー系ロックバンド「氣志團」を輩出した木更津だけに、客層はいわゆるマイルドヤンキーが多いのだろうか? 実際に足を運んでみた。

●専用バスの乗客は、カップルや家族連ればかり

都内在住で自動車を持っていない場合、「木更津」に行くには、東京、品川、新宿の各駅から出ている直行バスを利用すると便利だ。11月初旬の祝日、午前9時40分発の直行バスに乗るために新宿駅西口のバスターミナルに向かうと、すでに長蛇の列ができていた。

アウトレット人気を実感しつつ、5000円の往復バスセット券(3000円分のお買物券と交換できる)を購入して乗車する。乗客を観察すると、母娘とおぼ しき2人組や家族連れに加え、3~4割がカップルで占められており、筆者のような“おひとりさま”は誰もいない。1時間弱で現地に着くと、バス専用の広大 な専用駐車場から東ゲートをくぐって入場する。

施設内の雰囲気は、よくいえば落ち着いているが、観光スポットとしてのインパクトはさほど 感じられない。通常、三井アウトレットパークの各施設は、「横浜ベイサイド」の「19世紀アメリカの港町」や、「多摩南大沢」の「南フランスのプロヴァン ス地方」のように、なんらかのモチーフやコンセプトを基にデザインされている。しかし、「木更津」の場合は「海外のリゾート地」という、非常にざっくりし たものだ。まだ午前中ですいているということもあり、少し拍子抜けした感があった。

●20~30%オフは当たり前、半額近くの商品も

しかし、時計ブランドの「NIXON」やアパレルブランドの「AVIREX」、サングラスで有名な「OAKLEY」などの店舗を順に見ていくと、その安さに驚かされる。20~30%オフは当たり前で、半額近くになっている商品もあった。

この傾向は、高価なブランドになるほど顕著なようで、サッカー選手のクリスティアーノ・ロナウド(スペイン/レアル・マドリード)など海外セレブの 人気が高いアパレルブランド「Dsquared2」では、通常なら12万円を超えるデニムとレザーのジャケットが6万円台で販売されていた。

一方、デニムショップ「EDWIN」の隣に調理器具ブランドの「T-fal」が並び、その隣にメガネチェーンの「JINS」があるなど、店舗の並びは不規則な感が否めない。しかしながら、圧倒的な安さが人気の理由のひとつになっていることは間違いないだろう。

もっとも、現在のアウトレットモールは、登場したばかりの90年代前半とは、大きく中身が異なる。かつてアウトレットの商品は、新古品や生産中止となった 訳あり品、在庫処分的な意味合いが強く、それゆえ低い価格設定がされていた。色やサイズは不揃いのものも多く、目当ての商品を探し出すのが醍醐味のひとつ でもあった。

しかし、現在はブランド側がアウトレット用につくった商品の比率が高まっており、実は以前ほど消費者にとってうま味はない。買い得なのは、もともと高額商品が多いハイブランドだけで、セレクトショップの場合は通常店のセールのほうがお得ともいわれている。

●各店舗は人が少ないが、フードコートは大混雑

なぜ、それでもアウトレットモールは多くの人で賑わうのだろうか。その理由は、お昼に施設内のフードコートに行った時にわかった。各店舗を見て回っている 間は、それほど人が多いとは感じなかったが、フードコートに入ると「みんな、ここにいたのか!」と思うほどの混雑ぶりだったのだ。

千葉県松戸市の有名ラーメン店「とみ田」がプロデュースする「松戸富田製麺」をはじめ、どの店にも軒並み行列ができている。1200ある席が、荷物や人でびっしり埋まっているのだ。

また、施設内を歩いていて気づいたのは、犬を連れている人が多いことだ。「木更津」ではペットと一緒に入店可能な店舗もあり、施設内の至るところに犬連れのカップルや家族がウロウロしていた。

もはや、アウトレットモールはブランド品を安く購入する施設ではないようだ。週末や休日に訪れ、フードコートで食事をしたり、犬を散歩させたり、カップル や家族で楽しむ場所として機能しているのかもしれない。いずれにしても、筆者のように1人で行くところではなさそうだ……。
(文=青柳直弥/清談社)

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