観光分野の危機対応に関する国際会議「観光レジリエンスサミット」の閣僚級会合が10日、仙台市青葉区の仙台国際センターであり、日本などアジア太平洋地域の9カ国が「仙台声明」を採択した。将来の自然災害や大規模感染症に備え、観光産業の被害を最小化し、よりよい復興を遂げるための方向性を提言した。
声明には日本のほか、マレーシア、フィジー、パプアニューギニア、ラオス、韓国、東ティモール、パラオ、フィリピンが名を連ねた。
各国は東日本大震災や能登半島地震、コロナ禍を経て観光分野の脆弱(ぜいじゃく)性を再確認した一方、各国間の観光交流は今後さらに拡大すると予想。有事の際、観光が経済、社会に与える影響が増大する懸念があり、観光のレジリエンス(回復力)強化が極めて重要との認識で一致した。
仙台声明は危機の発生前・発生中、発生後に分けて対応をまとめた。発生前・発生中は①各地域の地理や観光産業の特性を踏まえたリスク評価②行政、観光事業者の役割分担の明確化③観光客、観光事業者への事前のリスク周知、危機発生時の正確で迅速な情報発信と風評被害対策の実施―を挙げた。
発生後は①過去の教訓を新たな観光戦略に反映させる②観光産業の継続・再開に向けた官民連携③地域の将来像と調和する観光商品の開発―の必要性に言及した。
会合後の記者会見で、斉藤鉄夫国土交通相は「世界共通の課題である観光レジリエンス向上の方向性について有意義な意見交換ができた。今回の会合の成果を踏まえ、アジア太平洋地域での観光分野の協力強化をさらに進める」と成果を強調した。
郡和子市長は「意見交換された内容が『仙台声明』として取りまとめられたのは、開催地として大変誇らしく、身の引き締まる思い。声明を踏まえてより一層、観光レジリエンスの向上に取り組み、その重要性を国内外に発信したい」と表情を引き締めた。