新型コロナウイルスワクチンについて、厚生労働省は年齢別、男女別の接種回数と副反応の傾向を初めて公表した。重度のアレルギー反応「アナフィラキシー」の報告頻度は女性に多く、心臓に炎症が起きる心筋炎や心膜炎は、若い男性に顕著にみられた。(沢田千秋) 【関連記事】男子高校生ら「副反応の心筋炎や心膜炎が心配…」 それでも厚労省がワクチン接種を勧める理由
◆ファイザーとモデルナ、年齢や性別に傾向
「以前より取り組んでいた年齢、男女別の推定接種回数について概算を試みた」。厚労省予防接種室は、ワクチンの副反応を審議する10日の検討部会で、米ファイザー製と米モデルナ製の推定接種回数を明らかにした。 接種してからワクチン接種記録システムに入力されるまでは時間差がある。そのため、同システムだけでなく、ワクチンの在庫や配送、分配を効率化するワクチン接種円滑化システムからもデータを集積。副反応の報告数を推定接種回数で割り、100万回接種あたりの報告頻度として計算した。 8月22日時点で、国内でのファイザーの推定接種回数は約1億150万回で、60歳以上が69%。モデルナは約1640万回で、60歳以上は16%だった。男女別では、ファイザーは女性が、モデルナは男性が過半数を占めた。 接種者の年齢や性別構成に違いが表れた理由について、厚労省担当者はファイザーは医療従事者、高齢者から接種が始まり、モデルナは職域接種で使われていると説明。「精緻に全て言えるわけではないが、高齢者は基本的に女性が多い。医療従事者も看護師ら女性が多い。働いている人は男性が多い」と推察した。
◆心筋炎や心膜炎のリスクは?
接種者の属性が違い、モデルナの報告数が少ないことから、両ワクチンの単純比較は難しい。それでも、アナフィラキシーが女性に多く、胸の痛み、心不全や不整脈から死に至ることもある心筋炎、心膜炎は若い男性に多い点は共通している。 10代のモデルナ接種者で心筋炎、心膜炎の割合が突出した。理由は、19歳が4人報告されたからだ。現時点では全体に重複報告も含まれていることから、厚労省は精査を急ぐ。若者の心筋炎、心膜炎が多い理由はまだ特定されていない。 日本循環器学会は7月、「新型コロナワクチン接種後の急性心筋炎と急性心膜炎の発症率は、新型コロナ感染後の急性心筋炎と急性心膜炎の発症率に比較して極めて低い」とする声明を発表。感染後に発症しても大半が軽症として、「ワクチン接種による利益は、ワクチン接種後の急性心筋炎と心膜炎の危険性を大幅に上回る」と呼び掛けた。 2回の接種を完了した人は人口の5割を超えたが、64歳以下は3割程度にとどまる。厚労省の担当者は「これから若年者の接種が進むので、情報をさらに集めて示したい」としている。