アパホテルでさえ1泊3万円…高すぎる「夏の旅行」を安くおさえる“裏ワザ”6選

今年の夏こそ旅行を楽しみたい!と、意気込んで宿を予約しようとしたら金額に啞然。格安ホテルの宿泊料金が高級旅館並みに暴騰している。その背景には、一言では語れないホテル業界の事情があった――。
◆サラリーマンの懐に追い打ちをかける“宿泊料金の高騰”

 ビジネスホテルの宿泊料金の高騰は、インフレにあえぐサラリーマンの懐に追い打ちをかけている。

 東京都内の食品会社に勤める40代のA氏が嘆息する。

「8月上旬に札幌市内で開かれる大事な取引先の社長の勇退パーティに招かれたのですが、平日なのに宿泊代が軒並み1万5000円以上でのけぞりました。

 うちの会社は、出張宿泊費の支給上限が1万2000円で足が出た分は自腹を切ることになるので、断念。ゲストハウスに泊まるのも考えましたが……」

◆ホテル業界を豹変させた「コロナ禍のトラウマ」

 お盆休みになれば、さらに厳しい金額になる。

 食事なしの素泊まり1名で、アパホテル・札幌すすきの駅前ではダブル3万2900円。ホテルリブマックスBUDGET那覇ではシングル2万1250円など、価格高騰は全国的な傾向にある(楽天トラベル7月27日現在)。

 その背景について、トラベルジャーナリストの橋賀秀紀氏が解説する。

「コロナが明けて、国内や海外観光客による旅行需要は高まっていますが、その半面、コロナ禍で従業員を削減したホテルが多く、フル稼働はできない。

 そのため受け入れられる客数が減り、供給がまったく追いついていません。

 加えて、コロナ禍の全国旅行支援などの施策により、それまで業界内でキープされてきた価格相場が崩れて競争が激化。

 需要や相場に合わせて価格が随時変動する『ダイナミックプライシング』のシステムによって、価格がどんどんつり上がっている状況です」

◆「高騰の先行き」専門家も意見が割れる

 また、ホテル業界のコンサルに携わるPwCコンサルティング執行役員パートナーの澤田竜次氏も次のように語る。

「現状のホテル業界は高値で設定してもお客さんを取れる自信がある。円安やウクライナ紛争で海外航空券が高いことも、国内需要を後押ししている」

 高騰の波の先行きは不透明だ。

 澤田氏は「コロナで旅行を控えていた日本人の“リベンジ需要”は年内を区切りに収束しそう」と予想するが、橋賀氏は「国民の旅行にブレーキをかけている中国が全面開放すれば、ますますインバウンド需要が増えるはず。来年以降も高値が続くのでは」と意見は割れた。

◆お値打ちホテルを見つけるカギは「地域性」

 ただでさえインフレ状態のホテル業界。かき入れ時のお盆シーズンを控え、お値打ちのホテルを見つけることはできるのか。

 そこで、澤田氏は地域性に着目する。

「例えば、北海道のニセコのようにスキーで有名なエリアは夏に泊まれば比較的お得です。

 また、東北や四国はビジネス需要が少なく、他の地域に比べて相対的に安い。特に、秋田県は7月の豪雨の影響もあり、価格が上がりにくいのでは。

 ほかにも、長野県の上高地のように、利用客が増えていても値段を上げない昔ながらのポリシーにこだわるエリアも残っています」

◆旅をコスパ良く満喫するための「工夫と努力」

 自由が利く単身旅行なら、あえて予約をせず、当日直接申し込みの賭けに出るのも手。

「ホテル側は空室を寝かせておくのがもったいないので価格交渉に応じやすい。チェックイン手続きが一段落して、決定権のある支配人の手が空く午後6時以降が狙い目ですね」(澤田氏)

 また、予約サイトに載らないような宿にこそ宝が眠っている可能性もある。「ダイナミックプライシングを導入せず、相場に関係なく独自の値段設定をしているような老舗の旅館は、お盆でもさほど値段を上げていないことがあります。

 泊まりたいエリアをグーグルマップで調べ、表示された宿に直接電話を入れてみたり、地元の観光協会や観光案内所に電話で相談すれば、紹介してもらえることもあります」(橋賀氏)

 物価高に宿泊費高の今、旅をコスパ良く満喫するには創意工夫と努力でカバーしたい。

◆お得な宿泊法6選

①予約サイトに載らない宿

 個人経営の零細な宿の中には、予約サイトに掲載せず、ハイシーズンでも価格変動をさせずに営業する“独立系”がある。

「ネットに疎いタイプであるため、ホームページさえないこともありますが、旅行愛好家のブログやグーグルの口コミを参考にしたい」(橋賀氏)

②会社契約の宿

「会社や健康保険組合が、福利厚生でホテルと年間契約を結ぶケースがあります。

価格は前年に決めるため、’22年の相場に基づいており、現状の価格の半額程度で泊まれるケースもある。大抵の会社では、出張以外での利用も認めています」(澤田氏)

③当日直接申し込み

「稼働率が100%の宿というのは実は多くなく、空室はあります。

 本音では安く売りきってしまいたいのですが、ネットに格安の当日価格を出すわけにはいかないので、直接来たお客さんに限ってお値打ち価格を提示することもあります」(澤田氏)

④ラブホテル

 “独立系”旅館同様に予約サイトに登録されていないケースが大半なので、相場や時期の影響を受けず、固定価格を維持する傾向が強い。

「ラブホテルの価格比較サイトがありますが、利用する人は多くないですし、狙い目と言えます」(橋賀氏)

 ホテルロータス池袋は、8月はお盆期間を除けば9月と同一の価格設定。

「ラブホテルは休憩サービスでも収益を図れるので相場に引きずられにくいです」(運営会社広報)

⑤2~3駅離れた宿

 利便性の高い繁華街から遠ざかれば、おのずとホテルの価格は下がる。

「泊まりたいエリアをグーグルマップで表示して『ホテル』と検索すれば、ホテルの場所に価格が表示されます。レンジを広げれば、掘り出し物が見つかる可能性があります」(橋賀氏)

⑥ホテルサブスク

 サブスクブームはホテル業界にも広がり、現在20社以上のサービスがある。

「行きたいエリアに拠点があるか、同伴者の不可、ホテルの種類などの条件を必ず確認。特にハイシーズンであれば、実勢価格よりも安く泊まれる可能性が高くなります」(橋賀氏)

「HafH(ハフ)」では、月会費9800円から毎月300コインが付与され、コイン数に応じて提携先の宿に泊まることができる。人気の星野リゾートに実質半額で泊まれることも。

【トラベルジャーナリスト・橋賀秀紀氏】
 Yahoo!ニュース・エキスパート。世界126か国を訪問。モットーは「宿泊代は1万円まで」。共著に『エアライン戦争』(宝島社)など。

【ホテルコンサルタント・澤田竜次氏】
 PwCコンサルティング執行役員。ワシントン大学でMBAを取得。ホテル・観光・不動産業界でアドバイザリーサービスを提供している。

取材・文/週刊SPA!編集部―[高騰する[格安ホテル]の舞台裏]―

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