日本ボクシングを再興する会が、日本ボクシング連盟の不正や山根明会長のパワーハラスメントについて訴える第2弾の告発状を用意していることが2日、明らかになった。同会は、先月27日に日本オリンピック委員会(JOC)、内閣府、文科省、スポーツ庁など、一般社団法人の日本ボクシング連盟に関係する6団体に告発状を提出、この8日に都内にて「なぜ今、私たちは立ち上がったのか。告発に至った経緯等を含めて説明したい」との理由で緊急の記者会見を開くが、日本ボクシング連盟の対応と告発状を提出した諸団体の動きを見ながら、第2弾の告発状を同じくJOC、内閣府、スポーツ庁など関係各位に追加で提出する準備を進めている。
オリンピアンや各都道府県連盟の関係者333人による“勇気ある告発”によって、リオ五輪代表の成松大介選手のJSCからの助成金の不正流用や、“奈良判定”と呼ばれる審判の不正や、試合用グローブなど用品の不透明な独占販売の実態など、山根会長のトップダウンの形で行われている数々の“悪行”が暴かれ表面化した。
一昨日、日本ボクシング連盟の幹部が、水面下で、日本ボクシングを再興する会へ和解協議の提案をしてきたことを筆者は報じたが、その後、協議に関する連絡は、途絶え、逆に山根会長が、テレビなどメディアのインタビューに答えて徹底抗戦の姿勢を打ち出してくるなど全面対決の様相と化している。
日本ボクシングを再興する会は、あくまでもボクシングの将来を考え、日本ボクシング連盟のガバナンスの正常化により、現場の体制や環境が改善され、財務体質などが健全化することを求めている。
だが、連盟サイドは、成松選手の助成金の不正流用以外は、まったく認める気配を見せず、連盟のホームページで反論を掲載、山根会長もテレビのインタビューで「全部ウソ」と真っ向否定するなど、対決姿勢を明らかにしている。事態の膠着化を恐れた再興する会では、最初の告発状では記載することができなかった新たな証拠を元に第二の告発状の準備を進めることになった。
関係者によると第二の告発状は「山根明会長によるパワハラを中心にした内容になる」という。
女子レスリングの伊調馨選手が、日本レスリング協会の栄和人前強化本部長によるパワハラを内閣府に告発、第三者委員会の調査によりパワハラが認定され、栄氏は辞任することになったが、現在、スポーツ界だけでなく、社会全体がこれまで見過ごされてきたパワハラを許さない流れがある。
関係者によると「審判の不正に関するパワハラだけでなく、山根会長による、いくつものパワハラが存在していて動かしがたい音声データを証拠として、おさえてある」という。
パワハラの証拠となる音声データには、パワハラというより“脅迫”とも捉えられるものが多く含まれており、山根会長が関係者に対して「殺すぞ!」と発言している決定的なものまであるという。
パワハラだけでなく、一般社団法人としてのコンプライアンスの違反を認定できる証拠についても複数つかんでいる。第二の告発状は、その点を強調したものになる。
日本ボクシングを再興する会が、現在、危惧しているのは、今回の告発が、ボクシング界全体へのイメージダウンにつながる点と、今後、山根会長の反論が一方的に垂れ流されることで、焦点がぶれること。そして完全否定をされているうちに責任が曖昧となり、この問題自体が風化してしまうことだ。
告発状の第一弾では、不透明なお金の流れや、財務面での不正などを中心に訴え、パワハラ関連の事項は審判不正に関するものだけだったが、最も改善したいことは、審判の不正などを正して、日本ボクシング連盟のガバナンスが正常化され、子供たちが正しくボクシングに打ち込める環境を作ることにある。決して日本ボクシング連盟内の権力闘争などでもなく、スキャンダルで世間を騒がしてボクシングのイメージが損なわれることも本意ではない。8日の会見では、その告発に至った背景と動機を詳しく説明する考えだという。
JOCは第三者委員会を立ち上げて調査に乗り出す姿勢を固めたようだが、助成金やオリンピック基金に関する不正が認定されれば、山根会長の責任問題は避けられないだろう。ボクシングを再興する会にも、アマチュアボクシング界の“ドン”の責任を徹底追及、退陣にまで追い込む不退転の決意がある。
(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)