6月1日から、アメリカザリガニとアカミミガメ(ミドリガメ)の野外放出や売買・頒布などが禁止される。いずれもペットとして身近な生き物で、既に飼っている場合や今後もザリガニ釣りなどを楽しみたい場合は、どんな注意が必要だろうか。
売買や頒布禁止 ペットとしての飼育は可
千葉県の市川市動植物園内にあるザリガニ釣り場は、休日になると子どもたちが行列を作る人気スポットだ。規制開始を前に注意事項を伝える掲示を変更し「釣ったザリガニは必ずここで逃がして」と注意を促している。園内の釣り場では餌を与えておらず、ザリガニが自然に生息している状態のため、持ち帰ってもらっても「頒布」に当たらないが、持ち帰った人が終生飼育できない可能性も考えて呼びかけているという。
北米原産のアメリカザリガニとアカミミガメは全国各地に定着しており、在来種を駆逐するなど生態系に深刻な影響を及ぼしている。家庭などで広く飼育されていることを踏まえ、2022年の外来生物法改正で、ペットとしての飼育を例外的に認めながら規制する「条件付特定外来生物」に指定できるようになった。
6月1日以降、アメリカザリガニとアカミミガメは輸入▽ペットや釣り餌用の生きた個体の売買や頒布▽野外への放出――などが禁止される。違反すると3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金が科される。
ペットとして飼育し続けたり、捕獲して飼ったりすることはできる。飼う場合は「終生飼育」が原則だ。ただし、知人に無償で譲り渡すことや、捕獲してその場で放つ「キャッチ・アンド・リリース」は問題ない。
学校や教育現場で飼育することも可能だが、逃げないような施設で飼うなど、環境省の基準を満たさなければならない。不適切な管理で逃げ出してしまった場合も罰則の対象となる可能性があるという。
市川市動植物園内のザリガニ釣り場を管理する市立市川自然博物館の金子謙一学芸員は「自然体験が少ない現代の子どもにとって、ザリガニ釣りや飼育は命の大切さを伝える貴重な機会でもある。『外来種=悪者』のように単純化しないよう配慮して注意を呼びかける必要がある」と苦慮する。
強い繁殖力、根絶難しく
東京都足立区の桑袋ビオトープ公園は来園者にザリガニを釣ってもらうことで「駆除」を進めてきた。釣った個体は区立の他施設で飼育する動物の生き餌などにしてきたが、生きたままでの頒布が規制されるため、今後は全て冷凍した後に餌として活用することを検討している。
園内では、取水していた川から侵入したとみられるザリガニが繁殖して、トンボの幼虫や水生植物が激減。来園者に釣ってもらって駆除した個体は21年度に2万5000匹、22年度は1万9000匹に上った。
繁殖力が強いため根絶するのは難しいが、今後も釣りでできるだけ数を減らしていく方針だ。同園解説員の増山諒さんは「アメリカザリガニが増えて悪影響が拡大しているのは、人間が日本に持ち込んだのが原因だ。問題の背景を解説する展示などで来園者に理解を深めてもらい、多様な生き物が暮らす環境作りにつなげたい」と話す。【三股智子】