罠にかかった動物を目の前にしたら、どうするか。昔話のツルの恩返しを聞いたことのある御仁なら、動物を助ける気持ちになるかもしれないが、ご用心。動物によっては警察に摘発されるというのが世知辛い現代社会の現実だ。
今回、そんな“罠”にかかったのは大阪府富田林市の女性(43)。アライグマを野に放したなどとして、警視庁生活環境課が10月31日、特定外来生物法違反容疑で書類送検した。外来生物を放した疑いでの摘発は全国初という。
「女性は3月~9月、北米原産の特定外来生物、アライグマ4匹を自宅で飼育し、府内の山に放した疑いで摘発されました。会社の倉庫で、生後間もない姿で発見し自宅でドッグフードなどをあげながら飼育。その後、放したそうです。女性は『駆除されるのが可哀想だと思った』と話しており、かなりの動物好きだったようです」(警視庁担当記者)
アニメ「あらいぐまラスカル」で知られ、愛くるしい表情で動物園でも人気のアライグマ。だが、その素顔は猛々しい。気が荒く、飼い主にも危害を加える上、手先も器用で脱走は日常茶飯事。雑食で、農作物を荒らし、両生類など他の在来種にも襲いかかる。かつては日本でもペットとして流通したが、飼いきれず捨てられ、野生化する個体も多かったといわれる。05年に研究目的を除き販売、飼育などが禁止される特定外来生物に指定された。
「放すのもだめ、飼うのもだめ。結局は行政に殺処分してもらうしかない。ただ、警視庁が入手した、放される前のアライグマの写真も見ましたが、いかにも赤ん坊という感じで何とも可愛い。情が移る気持ちはわかります。そもそもアライグマが箱をかじる被害が続いたことから、会社が仕掛けた罠にかかったので、女性にとっても仕事上の“天敵”なのですが……」(同前)
アライグマを放した場合、同法では3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金が科されることになる。
「情報提供があり、同課環境第3係(別名いきもの係)が任意で事情聴取をしたその日に放してしまった。飼育を続けていればこんな大事にはならなかったのだが……。アライグマの犠牲になる他の動物にも思いを馳せてほしい」(同前)
恩返し、どころか手痛いしっぺ返しで終わりそうだ。
(「週刊文春」編集部)