[東京 13日 ロイター] – 缶入りのチューハイやハイボールなどのRTD(Ready To Drink)市場が拡大している。味やアルコール度数で様々な商品が登場したことで、消費者の幅を広げることに成功。特に「甘くない」商品が市場をけん引している。ビール大手各社は基幹商品の強化や新商品投入に積極的に乗り出しており、主力のビール系飲料市場縮小の受け皿として、さらなる市場拡大に期待を寄せている。
<消費者層が拡大>
RTD市場は、2009年の1億ケース(250ミリリットル・24本換算)から13年には1億2900万ケース(前年比4.8%増)に拡大した。14年も3―5%の成長が見込まれており、酒類市場では数少ない成長カテゴリーとなっている。
市場をけん引しているのは、アルコール度数が7%以上と高く、甘くない「ストロング系」と呼ばれるカテゴリーだ。従来の「飲みやすい」「甘い」といった商品と対極にある商品だ。
サントリー酒類の山田眞二常務は「40代ー50代の男性で、食事中に飲むという需要が拡大している。ビール類のユーザーから流れている」と分析する。
<「とりあえずチューハイ」へ>
「とりあえずビール」から「とりあえずチューハイ」へ―――。キリンビールは、10日に発売を始めた缶チューハイ「ビターズ」で、ビール会社にしては異例とも言えるキャッチコピーを打った。
「ビターズ」は、アルコール度数8%でほろ苦さを前面に出した商品。このほかキリンは、トップブランド「氷結」(13年販売数量3140万ケース)の高アルコール度数商品である「氷結 ストロング」に期間限定商品を出すなどブランド強化し、RTDの販売増を狙う。
RTD市場では、シェアトップのサントリーと第2位のキリンの2強でシェア約65%を占めている。14年はサントリーが4890万ケース(3.8%増)、キリンは4110万ケース(同8.4%増)と、ともにさらなる成長を見込む。
ただ、伸びている市場だけに、他の2社も市場をけん引する「高アルコール」の分野を中心に、積極的に新商品を仕掛ける。
ビール類でジワジワとシェアを広げているサントリーは「‐196℃ ストロングゼロ」で高アルコール、「ほろよい」で、若者のアルコールへの入り口となる低アルコールのニーズに応えるなど、多面的に需要を取り込み、市場拡大をけん引している。
今夏は「RTDがさらに大きく伸びるための重要な夏」(山田常務)と位置付け6―8月に23品目と過去最多の新商品(前年は17品目)を投入し、確固たるポジションを築く構え。「-196℃ ストロングゼロ」については、最需要期の6―9月に前年比1割の増産を実施するほか、「来夏に向けて生産設備増強も検討している」と意気込む。
このほか、アサヒビールは5月に「辛口焼酎ハイボール」を売り出し、初年度250万ケースと強気の計画を打ち出した。「5月末までで45万ケースを販売し、好調なスタート。ターゲットとしている30―40代男性の支持が高い」(広報)という。
サッポロビールは、グループ会社であるポッカサッポロと開発体制を一体化したことで実現したコラボレーション商品として「キレートレモンサワー」の発売を始めた。
アルコール度数9%までならば、RTDの酒税は新ジャンルと同水準が適用されることから、ビールに比べて安い価格が実現できる。
ビール系飲料の減少とRTDの市場拡大を足せば、ちょうど100となる状況。成長市場であるRTDは、漸減傾向にあるビール市場のマイナスをカバーする有力なカテゴリーとして期待が高まっている。
(清水律子)