アンテナショップが続々、菓子メーカーの新戦略

菓子大手のカルビー、江崎グリコ、森永製菓が4月、東京駅と台場にそれぞれアンテナショップを出店する。
好調なカルビーの株価
 目玉は出来たて菓子の販売だ。カルビーは東京駅と台場の両方に調理コーナーを設けており、揚げたてのポテトチップスなどが食べられる。グリコは東京駅、森永は台場で調理販売をする。
 調理コーナーを設けたアンテナショップの先鞭をつけたのがカルビーだ。昨年末に原宿に出店し、若者や観光客を中心に話題を呼んでいる。多いときは1日2000人が来店し、店の外まで行列ができる。店舗数の拡大にも意欲的で今後、全国の主要都市に十数店出す計画を立てている。
 菓子メーカーがアンテナショップを相次いで出店するのは、他社との差別化を図る狙いがある。菓子市場は消費者の好みが多様化し、大ヒット商品が生まれにくくなっている。コンビニやスーパーなど小売り各社が自社で企画した低価格ブランドの売り場を拡大し、価格競争も激しい。
 さらに“外敵”も台頭してきた。「マーケットオー」ブランドでブラウニーなどを販売している韓国のオリオンだ。昨年3月に首都圏のセブン-イレブンでテスト販売されてから人気に火がつき、現在は大手コンビニチェーンが全国で販売している。当初は日本での知名度が低く「とにかく食べてもらわないと始まらない。イベントなどでの試食を地道に繰り返した」(オリオン日本支社・営業・マーケティング部の吉岡健一部長)という。
 日本の菓子メーカーはアンテナショップを出店することで、「どういう味が顧客に受け入れられるのかを探り、マーケティングに生かす」(カルビーの平川功執行役員)考えだ。これまでは売れ筋商品の分析をするのに、小売りの販売データが上がってくるのを待っていた。が、自社で店を持てば消費者の反応をすぐに確かめられるため、売れ筋商品の素早い供給や新商品開発などにも生かせるようになる。また、「顧客の目の前で商品を作り、ブランドの安心感を訴求したい」(江崎グリコ・マーケティング部の山崎雅夫氏)という狙いもある。
 今後も厳しい競争が予想される中、顧客を囲い込む武器にできるか。
(平松さわみ =週刊東洋経済2012年4月7日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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