イオン格安スマホが販売好調 次に異業種参入するのはどこか

 本体価格プラス、通信料金を合わせて「月額2980円(税抜き)~」という格安スマートフォンを4月4日から販売しているイオン。大手携帯電話キャリアが提供するスマホの約半額で利用できるとあって、売れ行きは好調だ。
 イオンの広報担当者によると、7日までに販売店舗の約半数で予約台数が完売し、割り当て数の大きかった北海道などでは既に販売を終了したという。同社のお膝元である幕張新都心店では若干の在庫もあるらしいが、限定8000台が捌けるのは時間の問題といえる。
 ここまで格安スマホが注目されているのは、ひとえにスマホの利用料金が高いという不満をユーザーが日頃から抱いてきたからに他ならない。
 モバイル評論家で青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏が話す。
「携帯キャリアが出している最新のスマホは、ディスプレイは高解像度でキレイですし、高性能なCPUを搭載していてネットや動画もサクサクと見ることができます。最大のスペックを詰め込んだ本体に、キャリア主導の通信プランがセットになっているので高額商品になっているのです。
 ただ、スマホユーザーの中には、メールやLINE、ネットを使った簡単な調べ物さえできれば満足だと思っている人は多いはず。電話機能は無料通話アプリも充実してきましたし、その他のアプリも数個インストールできればいいと。イオンの格安スマホが売れているのは、スペックを追い求めるよりも最小限の使い方で料金を抑えたいニーズが高まっている表れです」
 確かにイオンのスマホは大手通信業者の回線を借りるMVNO(仮想移動体通信事業者)の回線を使い、通信は低速度で動画の閲覧には向かないため、スマホのヘビーユーザーが乗り換えれば不便に感じるだろう。しかし、必要のない機能や通信速度に余分な料金を払いたくない人には逆にコストパフォーマンスが高い機種になろう。
 なによりも、異業種が格安スマホに参入する意義は大きい。
「日本のスマホユーザーはほとんどキャリアが提供する機種とサービスをセットで購入していますが、賢いユーザーはネット通販で海外の安い端末を購入してMVNOが提供する安価なSIMカードを差して使っています。スマホはもっと安く使えるという選択肢があることすら知らない人が多いのです。
 そこで、イオンのように大きな販売網を持つ流通業者が次々と端末メーカーと共同で独自ブランドの格安スマホを売り出せば、異業種も入り乱れた価格競争が起きて本家キャリアの料金ももっと下がってくるかもしれません」(前出・木暮氏)
 では、イオンのほかに独自のスマホ販売に乗り出す可能性が高いのはどこか。
「たとえばビックカメラをはじめとする大手の家電量販店は、すでに格安SIMカードを販売して、それに適したデータ端末も売っていますので、その先に独自ブランドのスマホを企画しても不思議はありません。
 また、消費者から月々料金を徴収する仕組みをもっているような業種は参入しやすいと思います。電気・ガス会社、あるいは地方のケーブルテレビ局(CATV)などは有望です。ガスのインフラを持っているTOKAIなどはブロードバンド事業にも熱心で自らMVNOにも参入していますし、CATVもブロードバンドの通信事業は慣れています」(木暮氏)
 格安スマホ参入で残る課題は、端末メーカーがどこまでキャリアに気兼ねなく低価格の機種を第三者に提供するかにあるが、そのハードルも下がっていると木暮氏。
「世界を見渡せばソニーの高性能機種として知られるエクスペリアでも、中国版は1万円以下の廉価版を出していますし、いまは世界共通のOSで海外メーカーの安い機種も日本で認証さえ取れば使える時代。そう考えると、ユーザーの使い方に応じて幅広い価格帯のスマホを自由に選べるようにならなければ、ますます日本だけ世界の趨勢から取り残されてしまうでしょう」
 行き過ぎたキャッシュバック(現金還元)や“乗り換え割”など露骨な販売手法を改めようという流れになっている日本のキャリア。いまがMVNOサービスを含めた「格安スマホ」が日本に根付くかどうかの分水嶺といえる。

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