大型ショッピングモールの2強、「イオンモール」と「ららぽーと」。その全面戦争の火蓋がいよいよ切って落とされる。
12月20日にグランドオープンする「イオンモール幕張新都心」(千葉市美浜区)は、イオン本社のお膝元ということもあり、同社の威信をかけた旗艦店として位置付けられている。
そのため、何をとっても国内最大級の規模を誇る。東京ドーム4個分の敷地に約350の専門店、約7300台収容の駐車場――。オープンに先立ち、報道陣向けの内覧会に赴いた全国紙の記者も、思わず「とにかく広すぎて“モール酔い”しました」と漏らすほど。
【(大人向け)グランドモール】【ファミリーモール】【アクティブモール(スポーツ&家電)】【ペットモール】とテーマ毎に4棟に分けられた巨大な商業街区の出現は、それぞれこだわりと目的を持った買い物客を夢中にさせるフロア構成になっている。
肝心の専門店の顔ぶれはどうか。新業態91店舗、千葉県初出店85店舗を揃えるなどオリジナリティーは満載だが、逆に「テナント揃えに苦労した証拠」と推察する向きもある。
「無印良品やユナイテッドアローズ、ビームス、トゥモローランド、ザラなどキラーテナントと呼ばれる人気のファッションブランドが入居していないのは、商圏でバッティングする三井不動産『ららぽーとTOKYO―BAY』(船橋市)との駆け引きがあった可能性がある」(ファッション誌編集者)
だが、イオンモールには「モノ消費」だけにとどまらない特徴がある。
吉本興業の劇場(よしもと幕張イオンモール劇場)や仕事体験テーマパーク(カンドゥー)、その他、3面のテニスコートやフットサルコート、ボルダリングスタジオなどレジャー施設も兼ねた「コト消費」が充実しているのが魅力だ。
流通コンサルタントの月泉博氏は、「コト志向のオンリーワン性を巨大スケールで実現させたことは評価できる」としたうえで、こんな懸念を示す。
「非常に分かりやすく、大向こうを唸らせるのは間違いないでしょう。ただ、それだけ飽きられるのが早いかもしれませんし、そもそもショッピングセンター内にレジャー・スポーツ施設をたくさん並べる必然性があるのかという気もします」
何はともあれ、年間集客目標3500万人を掲げ、前出のららぽーとTOKYO―BAY(年間来場者数は2500万人超)との集客争いを始めるイオン幕張新都心。果たしてどちらに軍配が上がるのか。
「1、2年の短期勝負なら、物見遊山でららぽーとからイオンに人が流れることは十分に考えられます。しかし、幕張のイオンは場所が悪く、半分は海に面したいわば『ハーフ商圏』です。千葉エリアの商圏だけでなく東京方面からの客を“逆流”させてはじめて成り立つモール。その磁力を発揮できるかどうかが勝負の分かれ目になるでしょう。
その点、ららぽーとは都市型のマーチャンダイジング(商品化計画)に優れ、商圏のアドバンテージがあることも考え合わせると、中長期的にはららぽーとに分があるかもしれませんね」(前出・月泉氏)
イオンを迎え撃つららぽーとも、11月下旬に西館をリニューアルさせ、子供用品を充実させた店舗を集めるなど、イオンへの顧客流出を防ぐ万全の策は打った。
今後も2強に限らず、大手各社が全国各地で続々と開業予定のショッピングモール。消費者を飽きさせないためにも、他モールにはない差別化をどこまで図れるかが生き残りのカギとなる。