イサダも! コウナゴも! メロウドも! 宮城の「春漁」が壊滅危機 水揚げゼロで漁打ち切りも

宮城県沿岸の代表的な三つの春漁が壊滅的な危機に直面している。イサダ漁は3月の解禁後、水揚げゼロのまま、4月末までの漁期を1カ月残して初の操業中止となった。メロウド(イカナゴ)は4年前から水揚げゼロが続き、その稚魚のコウナゴ漁は初めて事前に休漁を決定。原因は海流の変化などとみられ、春を告げる漁の異常事態に、関係者は危機感を募らせている。(石巻総局・山老美桜)

 県水産技術総合センター(石巻市)によると、三つの漁の記録が残る水揚げ量はグラフの通り。

 イサダ漁は3月1日に解禁。しけによる休漁が明けた3月12日以降、数隻が気仙沼沖に出漁したが、1匹も取れず引き揚げた。県小型漁船漁業部会は25日、委員会を開き「これ以上待っても見込みがない」と操業中止を決めた。

 イサダは年により水揚げ量の変動が大きいが、水揚げなしは1959年以降、東日本大震災があった2011年を除くと初めてだった。遠藤仁部会長(65)は「乗組員の賃金など経費がかさみ、見切りをつけた。気候はまるで、ずっと夏のようだ。取る魚がない」と嘆く。

 メロウドとコウナゴの水揚げは2010年代後半から激減し、メロウドは20年以降ゼロで、休漁状態が続く。コウナゴは22年が35トンだったが、昨季は全く取れず、今季は漁解禁の4月を前に休漁を決めた。出漁自体がないシーズンは初となる。

親潮の南下が弱まっていることが原因か

 センターは、近年寒流の親潮の南下が弱まっていることが一連の不漁の原因ではないかと指摘する。3月の調査では、漁場の女川湾から気仙沼沖の表面水温は平均16・9度。昨年同期より9・2度も高かった。

 この調査で、親潮の周縁に魚群を形成するイサダの群れは確認できなかった。親潮の勢いは岩手県北部沖にまでしか及んでいないとみられる。

 メロウドとコウナゴの不漁も親潮の弱さが影響しているようだ。餌となる動物プランクトンの数は暖流の黒潮の方が少なく、餌不足となっている可能性がある。センターの担当者は「親潮が2、3年連続して強く南下しない限り、水揚げの回復は難しい」と分析する。

 宮城のイサダ漁壊滅を受け、岩手県大船渡市の大船渡魚市場では、初水揚げがあった3月4日に1キロ90円だった浜値が一時、357円に跳ね上がった。

 影響はせんべいなどの原料にイサダを加工する業者に及ぶ。

 岩手や宮城からイサダを調達する石巻市の水産加工会社、木の屋石巻水産は年約700~800トン取り扱い、全国の卸売市場などに、ボイルや乾燥といった1次加工をして出荷する。今年は高値を受け、半分ほどの買い付けにとどまっているという。

 平塚善海取締役製造部長(52)は「ここまで高いのは過去にない。岩手でもしけで水揚げ量が少なくダブルパンチだ。春漁を主体に準備してきた例年の流れをすぐに変えるのは厳しい」と頭を抱える。

 [メモ] イサダはオキアミの一種で、釣りのまき餌や養殖魚の餌のほか、食用などに利用される。主な漁法は引き網漁。メロウドはすくい網で漁獲する。コウナゴは集魚灯で群れを集める火光利用敷網(ランプ網)で漁獲される。

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