イスラム食「ハラール」に熱視線…20億人市場

 イスラム教で禁忌とされる豚肉や酒の使用を避けた「ハラール」と呼ばれる料理や商品に、熱い視線が注がれている。
 ハラールの条件をチェックする認証機関には、イスラム圏の人口増加や経済成長を見据えた企業から申請が相次ぎ、ハラール料理を提供する飲食店や大学の食堂も増えている。
 ◆パスポート
 「ハラールはイスラム圏へのパスポートです」。さいたま市で2月中旬に開かれたフォーラム。イスラム圏への進出を検討している企業の関係者約150人が集まった。講演者の在日マレーシア人、アクマル・アブ・ハッサンさん(43)はハラール商品の開発を支援する会社を経営しており、「将来有望な市場。今がチャンスです」と熱く語る。
 イスラム教徒は2030年には20億人を超えるとも言われ、多くのイスラム教徒を抱えるインドネシアやバングラデシュは今年、6%台の高い経済成長が見込まれる。「巨大市場」を見据え、ハラール商品としての認証を得ようとする日本企業は増えている。
 認証機関の一つで、10年に設立されたNPO法人「日本ハラール協会」(大阪市)への申請件数は11年の2件から昨年は14件に急増。今年はすでに10件を超えた。ただ、条件を満たすのは難しく、「工場の全面改装が必要になる場合もある」(担当者)。この3年間の認証件数はまだ5件だ。
 別の機関で認証を受けた埼玉県上尾市のスパイス製造会社では、工場の一部をハラール専用に改装したという。経営者の男性(73)は「イスラム市場は魅力的」として、商品開発を急いでいる。
 ◆観光客にも期待
 イスラム圏からの観光客を取り込もうとする動きもある。日本政府観光局によると、昨年、インドネシアからの来日者数は07年比で6割近く増えた。日本ハラール協会によると、ハラール料理を提供する店はこの10年ほどで急増し、全国で200店前後に。ハラール認証の肉を提供している東京都渋谷区の焼き肉店「牛門」の石原貴之店長は「イスラム教徒と一緒に食事を楽しむことで相互理解が深められるのでは」と話す。
 今年5月、インドネシアに事務所を新設し、観光客呼び込みを狙う日本政府観光局は、イスラム教徒も食事を楽しめる店やお祈りができる場所を記した冊子も制作中という。

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