イチゴ復興に新エネ活用 太陽光・地熱で低コスト栽培

東日本大震災で被災した県南沿岸部のイチゴ産地を復興させようと、仙台市のものづくり企業2社が中心となった「仙台イチゴ復興・新エネルギー農商工連携プロジェクト」が動きだした。農業分野ではまだほとんど例がない太陽光や地熱を活用し、低コストで高収益を上げる施設栽培システムの開発・実証研究を山元町で展開する。
 プロジェクトの核となる2社は、亀山鉄工所とスマートソーラーインターナショナル。他にメーカーや非営利ファンド、仙台市など5社3団体、宮城大と東北大が参加する。東北経済産業局の補助事業に採択され、事業費2500万円の3分の2の助成が受けられる。
 実証研究は山元町の渡辺正俊さん(70)が経営する渡辺イチゴ農園で行い、4500平方メートルの被災農地に新たにビニールハウスを栽培用に6棟、育苗用に4棟建てる。
 ビニールハウスの多くは、暖房用にA重油と電力会社からの電気を使用しているが、プロジェクトでは亀山鉄工所の熱エネルギー技術とスマート社が開発した太陽光発電・発熱システムを用いて、電気と熱を供給。培土に伝熱管を敷設し、地熱で一定温度に保たれる地下水を流す加温・冷却システムも併用する。
 イチゴ栽培は生産コストに占める暖房費の割合が高く、新エネルギーの併用でA重油の使用を抑えることができる。宮城大と東北大が省エネ効果などシステムの検証、評価を受け持つ。
 亀山鉄工所の玉手淳プロジェクトマネージャー(41)は「ものづくり企業が持つ技術で農業の復興を後押しし、生産性とブランド力の向上に貢献したい」と意気込む。
 渡辺さんは「町内の生産者は激減しているが、山元からイチゴ栽培をなくしたくない。さまざまな機関の協力を得て、おいしいイチゴを作り続ける」と話した。

タイトルとURLをコピーしました