宮城県登米市津山町で1939年に見つかり、その後化石が消失した海生爬虫(はちゅう)類「イナイリュウ」を巡り、東北大が「発見者は鈴木喜三郎氏」と明記したパネルを作成、同大自然史標本館(仙台市青葉区)に展示している。発見者の確定などを求めていた鈴木氏の遺族の意向に応えた。
新たに作成したのは、東北で出土した大型脊椎動物の化石のパネルで、10月中旬から展示。ウタツギョリュウ(南三陸町)などとともにイナイリュウの記述を加えた。「1939年地元の小学校教員鈴木喜三郎氏により発見」と記し、「日本唯一の偽竜類」との見出しも付けた。発見部位は胴体部分としているが、標本所蔵については「所在地不明」となっている。
パネルは来館者に好評で、近くに縮小コピーを用意して配布している。東北大は今後、博物館誌にイナイリュウやパネルに関する記事を掲載するなどして、周知に力を入れるという。
東北大学術資源研究公開センターの高嶋礼詩教授(49)は「当時の状況から鈴木喜三郎氏が発見したと考えられ、パネルを作成した。学術的にイナイリュウ発見の重要性は今も変わらない。化石の消失は残念で、遺族の方には申し訳ない」と話す。
発見者の孫で石巻市の元新聞記者鈴木孝也さん(72)は「発見から82年ぶりに発見者が喜三郎と認めてもらいうれしい。応援してくれた発見地・登米市津山地区の人たちにも感謝したい」と話した。
イナイリュウは恐竜の祖先とされるノトサウルスの仲間で体長は推定1・3メートル。登米市津山町の新北上川近くの「稲井層群」と呼ばれる地層から見つかった化石は長さ90センチ、幅30センチの胴体の一部の骨格で、旧東北帝大の担当者が鑑定し論文を書いた。
当時「日本最古の爬虫類」と注目されたが、その後化石が消失したため古生物の図鑑から削除された。鈴木さんが東北大に「化石消失の原因や時期」「発見者の確定」などに関する質問状を出していた。