<イランで人気だったダンス、スンバが禁止された。イスラム法に基づく統治は、台頭する中間層の実態とますますかけ離れてきている>
イラン政府は6月に入り、フィットネスに人気のダンス「ズンバ(ZUMBA)」を禁止した。イランの健康マニアたちは、この決定の背後にいるイスラム法学者などイランの宗教・政治エリートに対する怒りを募らせている。エリートたちは、イランで増加しつつある中間層の実態とますますかけ離れつつある、と。
健康的なライフスタイルを推進するイランの団体「スポーツ・フォー・オール連盟」の事務局長アリ・マジダラによれば、ラテンアメリカが発祥のズンバは、イスラム的な価値観に反しているという。
ズンバは「イスラム的な価値観に反する」としてイランが禁止した
女性ランナーがいないマラソン大会
マジダラは、青少年スポーツ省に宛てた公開書簡の中でこう述べている。「ズンバをはじめとするリズミカルな動きやダンスは、いかなる種類であれ、形式を問わず合法的ではない。よって、そういった活動の禁止を求める」
イランのエリート層はこれまでも、自分たちが罪深いと考える日常的な活動を頻繁に禁止してきた。2017年前半にイラン当局が禁止したほかのものを紹介しよう。
■ライブ討論会
イランの選挙管理委員会は4月、ライブ討論会を禁止した。これは5月の大統領選に向けた措置で、討論会は事前に収録されたものを放送することになった。候補者は、「国のイメージを損なう」ような発言をしないよう事前に指示される。2期目の再選を果たした穏健派のロウハニや他の候補者からも批判があった。
■マラソン
テヘランでは4月に初の国際マラソン大会が開催され、数百名が出場した。だが目を引いたのは、女性ランナーが1人もいなかったことだ。規定で、女性が参加できるのは10km走のみ。それも、男性の観客がいないスタジアム内で行われる場合に限られている。イランには、男女が一緒にマラソンを走ることを禁じた法律はないが、青少年スポーツ省は事実上、男女混合レースを認めていない。
■ビリヤードとチェス
イランの青少年スポーツ省は3月、5人の女性ビリヤードプレイヤーに対して、国内外での1年間のプレイ禁止を言い渡した。イランのビリヤード・ボーリング連盟は、5人の女性プレイヤーが中国オープンに出場するために中国を訪れた際に、「イスラム教の原則」に反する行為を行なったと発表したが、詳しい説明はなかった。
イランの女性はスポーツを行う際、イスラム教徒が身につけるヒジャブなどを常時着用しなければならない。
2月には、チェスのナショナルチームが18歳のイラン人女性プレイヤーに対し、ナショナルチームへの参加と国内のチェストーナメントへの出場を禁じた。ジブラルタルで開催されたトーナメントでヘッドスカーフの着用を拒否したためだという。
■インスタグラムのライブ動画
イランの人権団体、イラン人権センターによると、イランの裁判所は2017年4月、写真共有アプリ「インスタグラム」のライブ動画の使用禁止を決定した。イランでは、イスラム教の理念に反すると宗教指導者が考えるようなソーシャルメディアへの投稿は厳罰を科せられることになっており、すべてのプラットフォームが厳しく検閲されている。
5月の大統領選を前に、政党や各候補者の支持者たちは、検閲の厳しい国営メディアの代わりにインスタグラムのライブ動画を利用していた。ライブ動画機能が大統領選挙の3週間前に禁止されたのは偶然ではない。
イランと敵対するスンニ派のサウジアラビアでは、女性がいまだに自動車の運転を禁止されているほか、聖職者がポケモンや雪だるま作りなど、あらゆるものを禁止していることは有名だ。イランの宗教・政治エリートも同様に、欧米的と見られるものを標的にして禁止するのが好みだ。
(翻訳:ガリレオ)