新型コロナウイルス感染拡大の影響で運休していた各地の国際線が相次いで再開し、東北の観光地でインバウンド(訪日客)の需要が回復の兆しを見せている。雪が降らないアジア圏から人が訪れ、スキー場などの復調が顕著だ。世界的な「ウィズコロナ」の定着を踏まえ、観光業関係者は「オンシーズンの春以降はさらなる活況になるのではないか」と腕まくりする。
春以降のオンシーズン見据え「さらに準備を」
「ここ数年なかった光景。来場者の相当なウエートを外国人客が占めている」。安比高原スキー場(八幡平市)の畠山護総支配人(54)が言う。
昨年12月中旬以降、タイやマレーシアなど温暖な国からの旅行客がじわりじわりと増え始めた。昨年秋、スキー場と近隣の高級ホテルがそれぞれ、利用者らの評価に基づく世界規模のコンテストで最高賞を受賞したことが知名度アップに貢献したとみられる。
畠山さんは「国内の大型スキー場全体が盛り上がっており、先行きに明るさが出てきた」とみる。
樹氷観賞スポットとして人気が高い山形蔵王の蔵王ロープウェイ(山形市)は仙台-台北線の定期便が再開した1月、台湾などからの団体客だけで合わせて約4200人を受け入れた。
外国人客数はコロナ禍前の約5割まで回復し、2、3月の予約も増加傾向。工藤利彦取締役(64)は「仙台以外の地方空港で国際線が復活すれば、さらに勢いづく」と期待した。
「着実に訪日客の需要が増している」と話すのは、南三陸ホテル観洋(宮城県南三陸町)の担当者。1月以降、オフシーズンの冬にもかかわらず30人規模の団体予約が月5件のペースで続いている。「訪問したい場所として近くの復興商店街や震災遺構などの評価が高い。旅行機運は高まっている」と手応えを語った。
政府の全国旅行支援は3月以降、予算が上限に達した自治体から順次終了する見通し。国内旅行の需要は減速するとの指摘があり、訪日客の存在感が増すとみられる。
東日本大震災の津波被害を受けた沿岸部に整備された複合観光施設「アクアイグニス仙台」(仙台市若林区)は公式サイトの多言語化対応など着々と「海外仕様」を整備する。平間雅孝支配人(49)は「元気になった沿岸部を海外の人に見せたい」と意気込んだ。
政府が5月8日に新型コロナの感染症法上の位置付けを「5類」に引き下げることを念頭に「春以降はさらに旅行ムードが高まっているはず」と見通すのは、松島観光協会(宮城県松島町)の志賀寧(やすし)会長(69)。「海外から旅行者を呼び込める空気がますます広がる。受け入れ態勢をきちんと整えなければならない」と気を引き締めた。