インフルエンザワクチン接種、10月開始 新型コロナと同時流行懸念 医療現場は戦々恐々

インフルエンザのワクチン接種が10月に始まる。インフルエンザ感染は新型コロナウイルス下の2020~21年と21~22年の2季は極めて低水準だったが、今季は新型コロナウイルス感染との同時流行も予想される。同時に感染すると重症化や死亡の確率が高まるとの研究報告もあり、医療現場は戦々恐々としている。(報道部・相沢みづき)

インフルエンザと新型コロナを同時に検査できるキット。医療機関と患者双方の負担軽減効果が期待されている

 仙台市太白区の花水こどもクリニックの花水啓院長は「インフルエンザの感染が爆発的に広がる恐れがある。最悪を想定して備える必要がある」と気を引き締める。過去2季に流行しなかったことで免疫を持つ人が減る上、元々免疫のない子どもに感染が拡大することを懸念しているためだ。

 日本感染症学会はインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨。厚生労働省も新型コロナワクチンとの同時接種を認めた。同クリニックでは「誤接種を防ぐため同時接種は行わない方針」(花水院長)だが、インフルエンザと新型コロナを同時に調べられる抗原検査キットを確保した。

 インフルエンザは特定の医療機関の定点調査で感染動向を把握する。東北6県での過去4季のインフルエンザ感染状況はグラフの通り。

ここ2年は感染者ほぼゼロ

 新型コロナ下の2季は、21年2月に山形県内の小学校で集団感染が発生したのを除き、各県ともほぼ感染者ゼロで推移。マスク着用や手洗いなど新型コロナの感染対策が奏功したとみられる。

 インフルエンザの流行予測で参考としてきた南半球のオーストラリアで今年、インフルエンザと新型コロナが同時流行した。新型コロナとの共存を図る「ウィズコロナ」への移行で行動制限が緩和されたことも加わり、日本でも早期流行や大規模感染が起こり得ると懸念する専門家が多い。

 9月前半を起点とする6県の今季の感染報告は宮城の仙南保健所管内の1人のみだが、花水院長は「仙台市内では、定点調査で把握できない小規模の集団感染が既に確認されている」と指摘する。

 国内の今季のインフルエンザワクチン供給量は、過去最多の7042万回分を見込む。このうち、接種開始の10月1日時点で供給予定の3340万回分は、高齢者の約9割の接種をカバーできるという。

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