国立感染症研究所は21日、16日までの1週間のインフルエンザ感染者が1医療機関あたり12・09人となり、今後4週間以内に大きな流行が発生する「注意報」レベル(10人)を超えたと発表した。成人の感染者が全体の約58%と過半数を占めたのが特徴。厚生労働省は「昨シーズンに新型インフルエンザにかからなかった世代で流行が広がっている」と注意を呼びかけている。
前週の5・06人から2倍以上に急増しており、感染研はこの1週間で約78万人が感染したと推計。直近5週間では新型への感染者が最も多く約63%。季節性のA香港型が約33%だった。
世代別では、16日までの1週間で感染した人は20代が22%と最多で、30代(16%)、5~9歳(13%)の順。昨シーズンは小児や10代に新型インフルの感染者が集中したが、今シーズンは成人でも新型への感染が目立っている。
この傾向について、感染研感染症情報センターの安井良則主任研究官は「昨シーズンの流行の中心だった5~19歳は免疫ができて、今シーズンは感染しにくい可能性がある」と話す。
昨シーズンに成人に流行しなかった理由については、「国民全体がインフル対策を徹底し、最も流行しやすい学校内では広がったが、外の社会まで流行が及ばなかったためではないか」と推測する。
東北大の押谷仁教授(ウイルス学)も「学校閉鎖や抗ウイルス薬の早期投与などが感染の広がりを抑えていた」と昨年の対策を評価。その上で「世界的にみると、新型インフルは40、50代の重症例が非常に多かった。日本でも感染が成人に及べば、多くの被害が出る可能性がある。警戒感が薄れている現状は大変危険だ」と警鐘を鳴らしている。