ウイグル族弾圧にトルコで反中デモが頻発

中国新疆ウイグル自治区などに居住するトルコ系のウイグル族が当局に弾圧されているとして、トルコ各地で反中国デモが頻発し、中国人旅行客が暴行を 受けるなどの被害も出ている。中国では民族教育や官製メディアを通じて「国内の少数民族は弾圧どころか優遇されている」との認識が一般的で、海外における 「抑圧政策」への批判の高まりは中国のネットユーザーにとっても理解不能な事態のようだ。

■中国人と間違え韓国人を襲撃

7月4日、トルコの最大都市イスタンブールで大規模な中国への抗議デモが展開され、中国人と間違われた韓国人旅行者がデモ隊の一部に襲われトルコ警察が救 出する事態が発生。1日には同市の中華料理店の窓ガラスが割られる事件も起きた。デモ隊の写真を撮ろうとして殴られた中国人旅行者もいるという。

トルコでにわかに反中機運が高まった原因は何か。中国国営新華社通信が運営するニュースサイト「新華ネット」などによると、イスラム教のラマダン(断食 月)に入った6月18日以降、中国当局がウイグル族に対し断食などの宗教行為を禁じているなどと一部のトルコメディアが報道。トルコ外務省は中国大使に 「深い懸念」を伝えたが、中国側は報道を否定した。

またフェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス上でも中国警察によるウイグル族の弾圧を伝えるメッセージが拡散するなど、中国の民族政策に反対する機運が一気に高まっていたという。

中国メディアは「デモを組織しているのは一部の急進的な民族主義者たちで、一般のトルコ人は友好的だ」と説明しているが、在トルコ中国大使館は5日、同国 に滞在する中国人に向けて、安全確保のためデモに接近したり、単独で外出行動したりすることはできるだけ控えるよう呼びかけた。

■中華思想むき出し

新華ネットの記事はデモの原因について「西側の歪曲報道による扇動がトルコ国内において反中国の感情を急速に高まらせた。中国政府は(少数民族の)正常な 宗教活動を保護している」と主張する。中国のネットユーザーもおおむねこうした見方を受け入れており、「中国の正しい姿が伝わっていない」と不満を募らせ る。

「宗教弾圧など嘘だ。政府は本当に少数民族に対して寛容な政策をとっている」

「でたらめ言うな。55の少数民族はいずれも漢族より待遇がいい。大学入試でも特別に点数が加算されるのに」

トルコを直接攻撃する書き込みも目立つ。

「イスラム国家は本当に暴力が多い。根本的な原因はイスラム教にある。宗教性が強すぎる。中国がイスラム国家と付き合う際には警戒が必要だ」。2012年9月に中国全土で起きた反日暴動で、日系の工場や商店、日本車が襲われたことはすっかり忘れているようだ。

「トルコはアルメニア人の虐殺を認めていない。その恥知らずさは小日本も及ばない」。第一次大戦中のオスマン帝国で起きたアルメニア人の大量殺害につい て、トルコがジェノサイド(民族・集団の計画的な抹殺)を否定していることについて批判しているのだが、しっかり日本への嫌みも忘れない。

伝統的な中華思想をむき出しにする人もいる。

「漢の時代に匈奴は滅ぼしておくべきだったのだ」

「いやいや、トルコは匈奴じゃなくて唐代に打ち負かした突厥(とっけつ)だろ」

「突厥はわれわれに駆逐された野蛮人だ」

強大な軍事力をちらつかせて反対者を押さえ込もうという発想もある。

「トルコは昔日の大帝国を復活させる夢を抱いているんだろう。元朝のように力で屈服させるしかない」。元朝そのものが異民族による征服王朝なのだが…。

「列強が林立するこの世界にあっては、自分の本領を発揮しないとだめだ。強硬な姿勢に出ることこそが王道だ」

中国では旅行先としてトルコが人気だが、渡航自粛による“兵糧攻め”を主張する声も。「トルコ人が好きなのは中国人ではなくて人民元だ。海外旅行するなら本当に歓迎してくれるところを選ぼう」

「そんな所には行かないに越したことはない」

■「対外宣伝を強めよ」

チベットやウイグルなどの少数民族政策や、国内の人権状況に対する批判が海外で高まるたびに、中国当局や官製メディアは「西側メディアによる扇動とデマ」 だと切り捨ててきた。だがその主張は、経済力の増大にもかかわらず国際的な発言権と権威がいまひとつ高まらないことに対する国民のいらだちを生んでいる。

「中国は世界世論に対する広報戦略を強めなければならない。中国のイメージを宣伝し、メディアを導き、誤解や歪曲を打ち破り、中国の魅力を広め、世界を理想社会にしなければならない」

「対外宣伝を強めるべきだ!海外メディアにできてなぜわれわれにできない?」

「わが国のメディアは外国人に信頼されてない。なんの影響力もないんだ」

「なぜ発言の影響力は西側だけしかないのだ。われわれの関係部門は強力な措置をとれ」

「中国の外交部門は無能だ」

そもそも自国のありように問題があるのでは、との懐疑の声も少数ながら生まれているようだ。

「なぜ世界各地で中国が排斥されるのか? クラスの同級生がみな自分を嫌っているとしたら、クラスメート全員に問題があるというのか? 自分自身の問題を直視したらどうか」(西見由章)

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