米国発のデリバリーサービス「UberEATS(ウーバーイーツ)」が日本に上陸して、はや4年が経とうとしている。多くの飲食店のメニューを抑え、直近3カ月でもっとも売れた商品となったのは、なんとローソンの「からあげクンレッド」だという(8月19日付ANNほか報道)。ご近所にあるはずのローソンのホットスナックがなぜ、配達で注文されるのか。
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ローソンはコンビニとして初めて、2019年にウーバーイーツに参加した。当初は14店舗でスタートした試みだったが、コロナ禍の巣ごもり需要を受け導入店が増え、8月20日には1000店舗を超えたという。
本来、ウーバーイーツのメリットは、外に出なければ食べられない飲食店の食事を、自宅で楽しめることにあったはず。ローソンのからあげクンを、わざわざ数百円の配送料を払ってまで配達してもらわなくても、と思うのだが……。
「からあげクンのウーバーイーツ人気には、ポイントがあります」
と解説してくれるのは、流通アナリストの渡辺広明氏である。
「ウーバーイーツは飲食店の食事を運ぶサービスですが、からあげクンの人気は、図らずもコンビニに宅配ニーズがある事を証明しました。例えば缶チューハイと一緒に注文して、おつまみとして食べる、というような“ちょっと食べ”利用法ですね。もうひとつのポイントは『コンビニの商品を宅配してほしい』需要が高かったということです。ローソンであれば、日用品などと一緒に配達してもらえるので、“ついで買い”にからあげクンがちょうどいいのでしょう」
そう、ウーバー“イーツ”でありながら、ローソンの場合、日用品や一部の雑誌も配達の対象になっているのだ。
「ローソンの店舗にある商品3000〜3500品のうち、配達の対象になっているのは約300品。そのうち30品ほどは、ティッシュやトイレットペーパー電池などの日用品です。そもそもコンビニで日用品が売れるのは、緊急購買のケースが多いのです。ドラッグストアやスーパーマーケットではもっと安く買えると分かっているけれど、急に必要になったから、定価でもコンビニで買う。これが配達してもらえるとなると、より便利ですよね。だから、ウーバーイーツと緊急購買は相性がいいわけです。しかもウーバーイーツでは、700円未満の注文には、少額注文手数料がかかります。せっかく配達してもらうのであれば、買い上げ点数が多くなると配送料の効率が良くなるので、ちょっとからあげクンも足して……となるわけです。ちなみに、ローソンのウーバーイーツの利用平均額は1312円だそうです」
地方、商品点数増に課題
ローソンの活況を受けてか、ファミリーマートでも、ウーバーイーツのサービス導入が進められている。残るはセブン-イレブンだが、こちらは「セブンミール」という配達サービスを行っている。店舗の前に、セブンのロゴの入った小型自動車が停まっているのを見たことはないだろうか。これは「セブンミール」という配達サービスだ。ただしセブンの場合、弁当などの一部商品の注文は前日までという締め切りがあったり、昼便と夜便の配達時間の制限があったりと、ウーバーイーツに比べると、やや使い勝手が悪そうだ。
「今でこそコロナ不況の影響か、バイトの応募が増えてはいますが、長く人手不足のコンビニ業界では、配達に人手を割くのもなかなか難しい状況でした。だから配達係を外注するウーバーイーツの導入は理に適っているといえるでしょう」(渡辺氏)
もちろん課題もある。都市部ではウーバーイーツの配達員が溢れているが、地方部では成り手がまだ潤沢ではなく、一部エリアのローソンでウーバーイーツ導入が進んでいないのには、そうした事情があると思われる。本来は過疎地域でこそ、配達は効果を発揮するはずなのだが……。さらには、
「ローソンがウーバーイーツを始めた当初は、配達可能な日用品は3品ほどだったそうです。だからもっと扱う点数を増やせばより便利になるかといえば、そうでもないようなんです。人間の心理として、選択肢が多すぎると選びにくいんです。だから実績を見ながら顧客ニーズに合わせて増やしていく事を検討しているようです。そうした時に課題になってくるのが、店員が行うピッキング作業です。例えばビールの銘柄や文房具の銘柄などを、より細かく指定し、ウーバーで配達してもられるようになったとしますよね。その商品を間違いなく売り場からピックアップするのは、意外と難しい。私だってワインの細かい銘柄を指定されて、すぐには見つけ出す自信がありませんし、これが日本語があまり得意でない外国人店員だったらなおのことです。現状は、ウーバー配達の対象になっている商品のプライスカードにシールを貼ったり、ワインなどにはリボンをつけたりして分かりやすくしているようですが、こうした点も、今後の課題でしょうね」
とはいえ、今後もコンビニ配達の流れは加速しそうだ。来店せずに商品が自宅へ……ローソンがマチのほっと“ステーション”から“ハブ”になる日も、遠くない?
週刊新潮WEB取材班