今月末の期限切れを待たずに終了したエコカー購入への補助金。新車販売だけでなく、自動車のリサイクル現場も駆け込み需要の恩恵に沸いた。東北の解体業者にも買い替えに伴う廃車が次々と運び込まれ、「例年の2~3割増し」という盛況ぶりだ。その分、補助金打ち切りの反動も大きいとみられ、今後の冷え込みに加え、「リサイクルが進まなくなる」と環境への影響を懸念する声も出始めた。
仙台市宮城野区の解体業者。約1000平方メートルの敷地は2段重ねになった廃車でほぼ満杯だ。エコカーへの買い替えで補助金が上乗せされる新車登録から13年を経過した車も多いとみられる。
「7月ごろから引き取り台数が急増した」と男性役員。「今年の夏は連日、30台近く入ってきた。エコカー補助がなかった2008年夏は多い日でも20台程度だったのに」と声を弾ませた。
自動車リサイクル促進センター(東京)によると、エコカー補助金制度が始まった09年度の廃車台数は、前年度比9%増の392万台。10年度も4~7月の合計で、前年同期を12%上回っている。
八戸市の業者、エコブリッジも1カ月の解体処理台数はここ数カ月、例年より2~3割多い。「工場はフル稼働。業務量を見越して従業員を2人増やした」と中里明光社長。解体した部品は国内外の専門業者に販売しており、「売り上げも引き取り量同様に2~3割伸びている」と説明する。
ただ、特需の恩恵は業界の隅々まで行き渡っているわけではなさそう。新車を販売したディーラーが廃車の引き取りを依頼するケースが大半になったためだ。仙台市内の業者は「ディーラーと付き合いがないところの仕事は増えていない」と、中古車販売業者などとの取引に頼る業者の思いを代弁する。
悩みの種は、補助金が打ち切りとなった今後のこと。自動車メーカーやディーラーと同じく反動があるのは必至だからだ。エコブリッジの中里社長は「引き取り量は業界全体で20~30%減少し、年度末まで冷え込みが続く」とみる。
宮城県中古自動車解体再生組合部品卸協同組合の平地健理事長は「制度によって車のリサイクルが進んだが、再び中古車市場に流れるようになってしまう」と懸念する。
NGP日本自動車リサイクル事業協同組合(東京)の玉木基裕事務局長も「再利用に回る中古部品の供給が落ち込むなど、自動車リサイクル法が目指す3R(廃棄物の抑制と再利用、再資源化)の流れに悪影響を及ぼす」と指摘する。