エコカー補助金“想定外の長寿” 新型車間に合い販売店は作業に忙殺

 早ければ7月にも予算切れで終了するとみられていたエコカー補助金が、9月に入っても残っている。想定外の長期化を喜ぶ消費者もいるが、セールの継続に販売店は躍起。駆け込み需要が業界予測を下回ったためだが、補助金終了後の反動減を小さく抑えられるとの観測もあり、補助金の長期化をめぐる評価は交錯している。
 「キャンセルが出ました。この車なら、エコカー補助金に間に合うかもしれませんよ」。都内の会社員宅に販売担当者から最近、こんな電話が入った。10月中旬の購入を予定し、補助金には「間に合わない」と思っていたが、販売店からのセールストークに飛びついて慌てて販売店に駆け込んだ。
 予算額2747億円の自家用車向けエコカー補助金は、2616億円の申請(今月13日時点)があり、残りは131億円。直近5日間でみると1日平均12億3千万円で、このペースなら、9月末まで持つ。
 当初は、夏ボーナス商戦と駆け込み需要との相乗効果で、8月上旬までには終了すると予測していたエコカー補助金だが、販売の伸びに息切れが目立ち、終了が「ずるずるとのびていった」(メーカー営業担当役員)。
 8月後半から、トヨタ自動車が「オーリス」、三菱自動車が「ミラージュ」、日産自動車が「ノート」と新型車を相次いで発売。補助金切れも見越した新車効果を狙った車種だったが、補助金に間に合う車も現れた。
 このため、今度は販売店では9月末決算セールと補助金を組み合わせた新たな販促を展開。「補助金に間に合わせるように書類の処理を急ぎ、休日も出社して作業する」(日産系販社)担当者も多い。また、メーカーに早い完成を要請するなど、交渉事も増えて大忙しだ。
 しかし、メーカー各社では、実は駆け込み需要の低迷に胸をなで下ろしている側面がある。
 2年前の補助金終了後は「3割減が3カ月続き」(日本自動車販売協会連合会)、メーカーも大規模な減産を余儀なくされた。今回は、「駆け込み需要がなければ、前回ほどの落ち込みもない」(日産の志賀俊之最高執行責任者)といった楽観論さえ浮上。補助金頼みの販売促進を早々に終わらせて、新型車の魅力を前面に出した販売戦略に切り替えようとしている。

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