エネルギー飲料はむしろ「心と体の健康に悪い」、米研究者が警告

「1杯のコーヒーの方がずっといい」

ちょっと疲れているかな、とか風邪ひいたかな、という時に、ついエネルギードリンクに頼ってしまうことはないだろうか。健康的なイメージのあるエネルギードリンクだが、実は「短期的な恩恵よりも健康面でのリスクの方が大きい」と警鐘を鳴らす論文がこのほど発表された。オープンアクセスのオンライン学術誌「フロンティア・イン・パブリックヘルス」に公開され、ロサンゼルス・タイムズなどが報じている。

論文は、米ハーバード大学大学院であるハーバードT・H・チャン・スクール・オブ・パブリック・ヘルスのジョゼイマー・マッテイ准教授らによるもの。米国のエネルギードリンク市場を対象に、こうしたドリンクから得られると宣伝されている効果や栄養素の含有量などについて、これまで発表された科学的な根拠に基づく研究などを調べた。

その結果は、エネリギードリンクはむしろ身体的にも精神的にも悪い影響があるというもので、ロサンゼル・タイムズは「どれだけ忙しくても1杯のコーヒーの方がずっといい」と報じている。

心と体に悪い影響が

サイエンス・デイリーによると、今回の論文でエネルギードリンクと関連づけられた健康上の問題には、血圧の上昇や肥満、腎臓障害、疲労、胃痛、虫歯といった身体的なものから、薬物乱用や攻撃性などに見られる「危険をあえて求めるような行動」や、心配性やストレスなどといった精神面での問題がある。これらは、糖分やカフェイン量が高いことに起因しているという。

また論文では、エネルギードリンクをアルコールで割って飲むことも危険だと指摘している。このようにして飲むと、単体で飲むよりも多くのアルコールを飲んでしまう傾向にあるらしい。これは、アルコールからの酔いが自覚しにくくなってしまうからだと考えられている。そのため、脱水やアルコール中毒などのリスクが高まってしまうのだ。

刺激物についての調査は不十分

論文の共著者の1人マッテイ准教授によると、これまでの20年間でエネルギードリンク産業は劇的に成長してきた。その市場規模は米国の場合、現在、年間100億ドル(約1.1兆円)に上るという。エネルギードリンクは通常、エネルギーやスタミナ、運動能力を上げたり、集中力を高めたりするために飲む「健康飲料」というイメージで販売されている。

しかし今回の調査では、健康面に悪い影響があることを示したという。このような飲料に多く含まれているガラナやタウリン、朝鮮人参といった刺激物についてはほとんど知られていない、とマッテイ准教授は指摘する。

また、なかにはレギュラーコーヒーの8倍となるカフェインが含まれている商品もあるが、子供や十代の青年のカフェイン許容量について調べた調査が少ないと論文は指摘している。マッテイ准教授らは今回の結果をもとに、エネルギードリンクのカフェイン含有量の制限や、子供や青年に対するエネルギードリンクの販売制限を提案している。また、将来的には、ガラナなどの刺激物に関してもっと多くの調査が必要だと指摘している。

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