インターネット広告配信を手がけるITベンチャーのオムニバス(東京都渋谷区)は、複数のウェブサイトから集めた特定の閲覧者に関する情報を基に、その閲覧者に対し訴求力のある広告を選び出して配信するサービス「オーディエンスターゲティング」を始めた。対象を絞り込んで“狙い撃ち”できるため、広告精度が高いのが特徴。多くの企業が広告費を削減する中、少ない費用で大きな効果を発揮できる同サービスのニーズは大きいとみて、広告主や情報を提供するサイト運営者の開拓を急ぐ考えだ。
オムニバスのサービスは、契約先サイトを閲覧した人について、検索やコンテンツ利用といった行動履歴の情報を集め、興味や好みによって分類。その人が自分のパソコンでサイトを閲覧する際に、購入したいと感じるような商品や利用する可能性が高いサービスの広告を優先的に表示させる。
例えば、ある閲覧者の行動履歴から「自動車とアウトドアが好きな人」と分類した場合、SUV(スポーツ用多目的車)の広告を掲載する。
閲覧者情報を集めて広告内容を変える手法は従来もあったが、収集範囲は1つのサイトに限られ、ごく一部の情報しか得られなかった。これに対し、新サービスは複数のサイトにまたがって情報を得ることができ、閲覧者を多面的に把握できるため、広告精度をより高められる。また情報は匿名化され、総務省の「事業者に一定の配慮を求める原則集」にものっとり個人情報の不正利用にはならないという。
オムニバスはサービス提供にあたり、広告費の10~15%を閲覧者情報を提供したサイトの運営者に支払う。さらに広告掲載料を除いた金額が同社の収益となる。
第1弾として、ファッション情報などを動画で配信するプロッツ(渋谷区)のサイト「ラグジュアリーティー・ヴィー」と契約。閲覧者の情報をオムニバスが取得し、広告配信に活用する。
オーディエンスターゲティングは、サイバーエージェント傘下のマイクロアド(同)なども今年からサービスを始めた。マイクロアドによると、閲覧者の行動履歴を活用した「行動ターゲティング広告」の2009年の国内市場は155億円で、14年には800億円に拡大する見通し。中でも、複数のサイトから情報を得るオーディエンスターゲティングは有力な広告手法である上、将来的に携帯電話への展開も見込まれ、同分野への進出は今後も続きそうだ。