オーディオ名門また撤退 オンキヨーが音響事業を外資に売却

かつて一世を風靡したオーディオ界の名門ブランドが、またも事実上の撤退に追い込まれた。創業70年を超えるオンキヨーが今月、主力の音響事業を外資に売却することを決めた。携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンの普及で、コンポなど据え置き型のオーディオ機器市場はここ10年間で6割ほど縮小。国内メーカーは踏ん張りどころを迎えている。

 オンキヨーは今月21日、連結売上高の多くを占める「ホームAV事業」(音響・映像)の売却に合意したと発表した。売却先は「マランツ」や「デノン」といったブランドを持つ米同業のサウンド・ユナイテッドで、売却額は7500万ドル(約82億円)。平成27年に買収した「パイオニア」ブランドの事業も対象だ。

 オンキヨーは売却後も引き続き「オンキヨー」ブランドを保有するが、製造・販売はサウンド社が引き継ぐ。オンキヨーは今後、ヘッドホン事業などに経営資源を集中する。

 オンキヨーは昭和21年に大阪市で創業。家庭向けの高品質のオーディオで人気を集め、1980年代後半には「ミニコンポ」ブームを牽引した。

 ところが近年は、スマホの普及などによる音楽鑑賞スタイルの変化で業績が低迷。今月24日に発表した平成31年3月期の連結決算は最終損益が3400万円の黒字に転換したが、30年3月期まで5期連続で赤字だった。

 電子情報技術産業協会によると、30年のオーディオ関連機器の国内出荷額は853億円で、20年の2104億円から約6割も縮小。この間、多くのオーディオ機器メーカーが淘汰の波にさらされてきた。

 20年には日本ビクターとケンウッドが経営統合。高級アンプで知られた山水電気は24年に民事再生法の適用を申請し、26年に破産した。パイオニアはオンキヨーにオーディオ事業を売却後、カーナビ事業を中心に生き残りを図ったが、今年3月には経営危機を抜け出せないまま外資の傘下になった。

 一方、パナソニックは26年に「テクニクス」ブランドを復活させ、CDよりも高音質の「ハイレゾリューション」音源に対応した高級機で市場の活性化を図ろうとしている。同社の広報担当者は「音響事業は高収益事業とは言い難いが、将来的には住宅事業や車載事業と組み合わせることで新たな価値やサービスを提供できる可能性もある。今後も技術開発に精力的に取り組んでいく」としている。

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