食品加工の五光食品(塩釜市)は、八戸工大の青木秀敏教授(食品科学工学)と共同で、カキに紫外線を当ててうま味成分を増大させる製法を開発した。天日干 しの知恵を応用した手法で、風味を落とさずカキ加工食品をつくることができるという。同社は、新製法で加工したカキの商品化を目指す。
カキは水分が多いため、あぶるなどの加工時には下処理で水分を減らす必要がある。従来の製法では水分とともにうま味成分が抜けてしまうことが課題だった。
同社は課題克服に向け、紫外線A波によるうま味成分増加のメカニズムを研究している青木教授に協力を要請。昨年からカキに紫外線を照射する装置の共同開発に取り組み、一定時間光を当てることでうま味を逃さず水分だけを落とせる加工装置を完成させた。
照射後は水分が抜けることで4割重量が減るが、うま味成分のアミノ酸量が約46%、グリコーゲンが約27%増えることが分析で明らかになった。野菜ソムリエ10人に試食してもらった比較テストでも、照射したカキの評価が高かった。
同社は、あぶりカキといった加工品の下処理に、新開発した製法を応用する方針。特に重さ30グラムを超える大粒のカキの加工に生かし、首都圏などに出荷したい考えだ。
佐々木和二専務は「カキ養殖業者も高齢化が進んでおり増産は難しい。高品質なものを作り、付加価値を高めて市場に出したい」と狙いを説明する。
五光食品は東日本大震災の津波で工場が水没するなど大きな被害を受けた。機器の開発は科学技術振興機構(JST)の復興促進プログラムの研究助成を受けて 行われた。青木教授は「これまでにない製法でおいしい海産加工品をつくることができる。この装置で被災地の復興に寄与していきたい」と話した。