カシオ計算機は9日、コンパクトデジタルカメラ事業から撤退すると発表した。
高性能カメラつきのスマートフォンに押され、年間の出荷台数はピークの1割以下の55万台に落ち込んでいた。今後は監視用カメラなど企業向けにシフトし、消費者向けは23年の歴史に幕をおろす。
「続けていても増収が見込めない」。樫尾和宏社長はこの日の決算会見で、そう説明した。2018年3月期のデジカメ事業の売上高は123億円で、ピークの08年3月期より9割以上減った。営業損益は49億円の赤字で、前年(5億円の赤字)より悪化。すでに生産を終えており、「CASIO」ブランドのカメラは近く店頭からなくなる見通しだ。修理には当面、対応する。
液晶画面つきのデジカメ「QV―10」で参入したのは、市場がまだ創生期だった1995年。相場の10万円超より安い6万円台で売り出したのも支持され、ブームの火付け役となった。02年に発売した「EXILIM(エクシリム)」は薄さを極め、画素数やズーム倍率を競う流れに一石を投じた。11年に出した「自分撮り」に向く「TRシリーズ」は中国で人気が広がった。
樫尾社長はカメラ事業について「違うモデルに変革する」とも述べ、コンパクトへの再参入にも含みを持たせた。山形県の工場は閉鎖せず、医療やスポーツ記録向けのカメラなどをつくって技術力を保つ方針だ。
ただ、とりまく環境は厳しい。日本のメーカーによる17年のコンパクトデジカメの出荷台数は計1330万台で、5年前の2割以下だ。オリンパスは今月、中国での生産を終了。ニコンも昨秋に中国・江蘇省の工場閉鎖を発表している。(内藤尚志)