元日本代表FW三浦知良(47)=横浜C=が、ブラジルW杯(12日開幕)に出場する日本代表の「特別スタッフ」として参加することが4日、分かった。日本サッカー協会が要請したもので、本人や所属クラブも快諾。近日中に正式に発表される見込みだ。現役選手のスタッフ入りは日本代表では初。ブラジルを知り尽くすカズの力を借りて、ザック・ジャパンがW杯初の8強以上を狙う。
ブラジルW杯で初のベスト8以上を目指す日本代表に、これ以上ない援軍がつくことになった。その名もカズ、三浦知良だ。日本サッカー協会関係者によると、「カズ派遣」プランが浮上したのは4月下旬から5月上旬にかけてだった。その後、W杯を主催する国際サッカー連盟(FIFA)へ、パスの発行規定についての問い合わせや、所属する横浜Cとの調整、本人の意思確認などの作業を進め、この日までに話がまとまった。
カズにとっても、悲願のW杯になる。98年フランス大会で最終候補に残りながら落選。その後も、W杯出場には恵まれなかった。02年にも当時のトルシエ監督からコーチ就任を要請されたが、あくまで選手にこだわって固辞。今でも悲願のW杯出場を目指し、47歳で現役を続けている。現在は、左足付け根の炎症で戦線を離脱しているが、ブラジルでスタートさせたプロ生活28年の経験は、上位進出を目指す日本代表に、必ず大きなものをもたらすはずだ。
まずは、選手の相談役だ。現代表の主将MF長谷部をはじめ、FW香川やDF陣の長友、内田、吉田らの海外クラブ所属の選手たちと定期的に食事会を行うなど、すでに「兄貴分」といえる。長丁場のW杯期間中は、半ば隔離された中で過ごす。そこでカズがいれば、的確なアドバイスを受けることができる。
また、カズは選手たちにとって、「子供の頃からのあこがれ」(内田)という存在。スーパースターからのゲキを受ければ、イレブンのテンションも上がる。FW陣のプレーに迷いが生じた時には、国際Aマッチ通算89試合で日本歴代2位の55ゴールを奪ったストライカーとして、技術的なアドバイスを送ることもできる。ブラジルの公用語のポルトガル語は堪能。セリエAのジェノアに所属しただけに、イタリア語でもアルベルト・ザッケローニ監督(61)とイレブンの橋渡し役を務めることができる。選手とコーチ陣の間を取り持つ存在をチームに組み入れるか悩んでいた指揮官にとっても、心強い存在になることは間違いない。
詳細は近日中に発表されるが、日本協会は当初、より現場に近い形での参加を求めていたという。本大会では各国協会に配布されるパスの数は決まっており、チームと行動をともにするパスについては、さらに限定される。協会はそのうちの1枚をカズに託そうとしていたことから、チームに近い「特別スタッフ」もしくは「特使」のような肩書での参加が有力だ。
W杯期間中もJ2のリーグ戦は開催されており、横浜Cを離れることを迷っていたカズ。それでも、サッカー界の共通認識である「日本代表への貢献」を優先させ、横浜Cも背中を押したという。合流時期はチームのブラジル入り後と見込まれる。“キング・カズ”が満を持して、ザック・ジャパンの一員に加わる。
◆W杯で代表に帯同したスーパースター ブラジル代表は1998年フランス大会で、ザガロ監督が後に日本代表監督となったジーコ氏をテクニカルコーディネーター(総監督)として補佐役に指名。チームは決勝で0―3と開催国に敗れたものの、準優勝だった。イングランドのカペッロ監督はベスト16で終わった2010年南アフリカ大会で、左アキレス腱(けん)断裂で選手としてW杯連続出場が3度でストップしたMFデービッド・ベッカム(当時ACミラン)を、精神的支柱としてコーチの役職で代表に帯同させた。