カズレーザーが明かす、「頑張らない」ワケとは?

2016年から徐々に名前が知れ渡り、今では大ブレイク中のお笑いコンビ・メイプル超合金のカズレーザー。初の冠番組『絶対!カズレーザー』(毎週火曜 テレビ朝日)もスタートするなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。若手らしからぬ落ち着きと機知に富んだコメントが光る彼だが、それは一体どんな人となりから生まれてくるのだろうか。カズレーザーに自身の考えを聞いた。

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◆人生なんてなりゆき。決断しないのが一番、偉い

なぜここまで各メディアから需要があるのか? 本人に聞くと「爪痕を残そうとしていないのがいいんでしょうね。若手って、頑張るじゃないですか? 僕は頑張ってないのがいいんじゃないかな」と、さらりと言ってのける。若手芸人が売れるために必死で這い上がろうとする中、その飄々とした態度が特筆すべき“個性”である。

カズレーザーは、お笑いコンビ・メイプル超合金として、『M-1グランプリ2015』で決勝に進出。以降、様々なバラエティ番組のひな壇で頭角を現し、クイズ番組『Qさま!!』(テレビ朝日系)では頭の良さも発揮。4月からは、カズレーザーが毎回異なる企画に挑む初の冠番組『絶対!カズレーザー』のほか、『良かれと思って!』(フジテレビ系)のMCの1人に抜擢されるなど、活躍の場をさらに広げている。とんとん拍子に売れている印象もある彼だが、「人生なんてなりゆき。決断しないのが一番、偉い」と、心境はあくまでフラット。そんな彼にも契機となることはあったようで、「人生においてもっとも大きな決断をしたことは、事務所にサンミュージックを選んだこと」だったという。サンミュージックといえば、ベッキーが所属する事務所。メイプル超合金の活躍が顕著になった2016年といえば、まさに“騒動”の最中だった。

◆他の事務所に入っていたら絶対に芸人を辞めていたと思う

所属したことに対し、「あれはホントに人生最大のミスといっても過言ではないです」と笑いながらも、「でも、サンミュージックを選んだからこそ、今の僕がある気がして。もし、他のお笑い事務所を選んでいたら、僕、絶対に芸人は続けられず、途中で辞めていたと思います。だって他のところの芸人さんって、みんな鬼のように面白いし、鬼のように努力してるじゃないですか。そんなの疲れちゃいますもん(笑)。毎秒面白くなくてもよくないか?って、僕はどこかで思っているので」と語ったカズレーザー。彼にとっては、ある意味、自分を生かす絶好の場所だったともいえる。

「昔から面白い人が好きで、気づいたら芸人になっていた」と、芸人を志した流れも“なりゆき”だった。「アルバイトもほとんどしたことがないですし、家では甘やかされていました。売れてないときも、先輩におごってもらったり、収入がなくても芸人である限りなんとかなるものなんですよ」と、“なんとかなってきた”これまでの半生が、野心や執着心のなさの一因か。今後の野望を聞くと、「自分1人だと、たぶん何もできない。だから仕事のときは僕以外に面白い人が絶対に必要なんです。もし自分が面白い人だったら、面白くない人と番組をやらなきゃいけないじゃないですか。僕はあくまで、ひとつのパーツでいたいくて。だから今の状態は僕にとって、やり過ぎのような気がします」と、自身の立ち居地を冷静に分析する答えが返ってきた。

◆才能はない。才能があったら芸人になっていませんよ(笑)

カズレーザーといえばバイセクシャルを公言していることでも有名だが、現在は芸人仲間と同居中。「恋人ではないっすよ。そいつ、すげーブスなんで(笑)。基本、他人にはそれほど興味がないんです。恋愛も自分の中では重要ではない」と言いつつも、「1人では暮らせません。だって家に帰って、しゃべる相手がいないとしんどくて。1人だとボケても誰もつっこんでくれませんからね。それって最悪じゃないですか(笑)」と、どこか“芸人らしい”一面も。『カズレーザークリニック』(テレビ朝日『お願い!ランキング』内コーナー)で恋愛相談を受けることも多いが、「人を好きになる気持ちはわかるけど、悩む気持ちがわからない。なんで悩んでいるかはわかりますけど、理由がわかるってことは、もう答えが出ているってこと。答えが出ていることに悩む必要はありませんからね。逆に答えが出ないことだったら、悩んでも仕方ないですし」と断言。禅問答のようでもあるが、真理をついた言葉たちは、多くの視聴者の目を覚ましてきた。

最近のプライベートの趣味は美術館めぐりや画集の鑑賞で、「今、好きな画家はウジェーヌ・ドラクロワ」だそう。同志社大学卒のインテリ芸人でもある彼だが、単に“高尚な趣味”というわけではなく、「遠くから見たらすげーカッコイイんですけど、近くで見たら下手くそで(笑)。それでも、めちゃくちゃ生き生きしている絵が不思議だなって思います」と、視点はあくまでカズレーザー流。『絶対!カズレーザー』の初回、第2回放送では彼が街の奇人を訪ねていたが、そこでも冷静につっこみながらも独自の視点が生かされていた。収録後には、「手応えは全然ない」「奇人が出てくるけど、僕は凡人」などと“らしい”コメント。「体を張ったことはやってみたいですね。僕、体力なくてすぐ風邪引いちゃうんですけど」と、実現するのかしないのかわからない抱負も。カズレーザーというグイグイこない芸人と、実験的な深夜番組のノリは、予定調和ではない面白さを見せてくれそうだ。

バラエティにおいて、賑やかな若手芸人たちの中で、カズレーザーの落ち着いた存在感は逆に目に留まる。彼の発言は一般視聴者も納得・共感する言葉なのに、つねにどこかハッとさせられる部分があるからだ。それは、このようなカズレーザー自身の何ものにもとらわれない自由な考え方と、哲学的とすら思える知見によるものではないだろうか。「才能? いや、ないっすね。才能があったら芸人になっていません。もっと違うことをやっています(笑)」というカズレーザーだが、その“執着のなさ”こそが彼の才能。これまでにない異質なタイプのお笑い芸人が、頭ひとつ突き抜けるのも必然なのかもしれない。
(文:今 泉)

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