カット野菜、広がるラインアップ 栄養や利便性UP 専門家も太鼓判

買ってきてすぐに食べられるカット野菜のニーズが、ますます高まっている。調理の時短につながり、価格が安定していることも魅力だが、昨今は「生野菜の代わり」から、カット野菜ならではの魅力を生かした商品が続々と登場。積極的にカット野菜が選ばれる時代へと変化しつつある。栄養価や内容、カット方法まで、細かなニーズに応えた商品が人気のようだ。(加藤聖子)

【写真】「ベジタブル麺」などユニーク商品も

■数十円高くても

野菜栽培・販売を主力とするサラダコスモ(岐阜県中津川市)の宮地隆彰(たかあき)営業本部長は、昨今のカット野菜市場について「市場が拡大したことで、価格競争だけではなく、新たな付加価値が求められるようになってきた。栄養価、利便性などで差別化し、ラインアップが広がっている」と話す。

同社の商品で人気が高いのが「ブロッコリーの新芽 プレミアムサラダ」。抗酸化作用や解毒作用に優れたスルフォラファンという成分が含まれていることで、最近注目されている野菜の一つであるブロッコリーの新芽が入っている商品だ。「普通のカットサラダより数十円高いが、栄養面でプラスアルファを感じていただいており、売れ行き好調」という。

他にも袋のままレンジで温められる「野菜増し袋」も好調。温めてからカップラーメンや焼きそばに入れるだけで、1人分の理想的な1食分(120グラム)の野菜を食べられる。調理に慣れない人でも温野菜を取り入れやすい。

■交ぜて無理なく

カット野菜大手、サラダクラブ(東京都調布市)の売れ筋商品の一つが「10品目のサラダ」シリーズ。同社広報担当の吉田政道さんは「普通の生野菜で、この商品と同じように多くの品目の野菜をそろえようとすると、千円以上かかったりする。多品目の野菜を取りたいときは、カット野菜はむしろ経済的」と話す。

収穫時期が限られる野菜も同様で、単品ではせっかく買っても使い切れなかったり、そもそも手に入りにくかったりするが、カット野菜に入っていれば気軽に試すことができる。

また、新商品の「ベジタブル麺」シリーズもユニークだ。ニンジン、ダイコン、ケールの3種が発売されており、野菜を細く、長く麺のようにカットしている。「ラーメン、うどん、パスタなどに交ぜたり置き換えて使える。無理なく野菜を食べる習慣をつけてもらえれば」と吉田さん。ダイエットや健康習慣として取り入れるも良し、野菜嫌いな子供にも面白がって食べてもらえる効果も期待できそうだ。

カット野菜については、その栄養価や安全性について疑問視する人もいる。実際はどうなのだろうか。

女子栄養大食物科学研究室の日笠志津(ひがさ・しづ)准教授は「基本的には安全と考えて良い。市販されているものは厳しく衛生管理されている。低温で流通・保管し、消費期限を守って早めに食べれば問題ない」と話す。

ただ、デメリットもある。「やはり、風味や香りは普通の生野菜の切りたてには劣ってしまう。栄養価については、念入りに洗浄されることもあり、ビタミンCなど水溶性の栄養成分が2~4割程度流出しているとの調査もある。ただ、それらは家庭で普通の生野菜を洗っても流出するもの」。このため、実際に食べる段階では、カット野菜の方が大幅に栄養価が低いということはなさそうだ。

厚生労働省の「平成29年国民健康・栄養調査」によると、成人の1日の野菜摂取量の目標は350グラムだが、実際の摂取の平均値は約288グラム。多くの人が不足しているのが現実だ。通常の生野菜に加えてカット野菜も上手に活用し、不足分を補いたい。

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