カメムシ注意報、今年すでに24都道府県で発令 大量発生のワケ

カメムシは1年おきに発生数が増えたり減ったりする傾向があるという。今年は数が多い「表年」。加えて記録的な早さの梅雨明けも影響し、地域によっては過去10年で最も増えている。稲や果物への被害も懸念されるため、これまでに24都道府県が農家向けの「カメムシ注意報」を発表した。強烈な臭いを発し、家の中にまで入り込む厄介者のカメムシ。その知られざる発生メカニズムと習性とは。 【カメムシ注意報を出した24都道府県】  農作物を荒らすカメムシは数十種類が知られ、ストロー状の口で養分を吸う。稲に付く「斑点米カメムシ」と、ナシやモモ、リンゴ、ミカンなどの果実全般に付く「果樹カメムシ」に大別され、注意報も別々に出される。このうち、隔年で発生量が増減するのは果樹カメムシの方だ。  「斑点米カメムシの被害に遭った米は名前の通り黒色の斑点ができて、値段が安くなってしまいます。困るのは収穫するまで、どれくらい斑点入りの米が交じっているかが分からないこと。果実の場合は、カメムシに吸われると表面がデコボコになったり変色したりして売れなくなります」。山口県農林総合技術センターで病害虫を研究する専門研究員の溝部信二さん(63)はそう説明する。  山口県では、県内4~5カ所に設置した「予察灯」と呼ばれる白熱灯によるカメムシのおびき寄せ調査で、5月26日から1カ月間に集めた果樹カメムシは過去10年で2番目に多く、隔年現象と関係ない斑点米カメムシも過去10年で最多だった。このため県は7月4日、果樹カメムシと斑点米カメムシの注意報を同時に発表し、農家に薬剤散布などの対策を呼びかけた。  隣の広島県でも、5カ所の調査地点のうち3カ所で、果樹カメムシの数が過去10年で最多になり、7月12日に注意報を発表。東京都では、立川市内にある調査地点で6月下旬、果樹カメムシが過去10年で1、2番目の多さとなり、7月7日に3年ぶりの注意報を出した。南多摩地域で栽培が盛んなナシやブドウなどへの影響が懸念されるという。  農林水産省のまとめによると、7月26日現在、果樹カメムシの注意報が出ているのは関東の一部と近畿以西の計18都府県で、斑点米カメムシも9道県。どちらか一つでも出したのは昨年は14県(7月26日時点では3県)だったが、今年は既に24都道府県に上る。  そもそも果樹カメムシが隔年で増えたり減ったりする傾向があるのはなぜなのか。それは、果樹カメムシが餌にするスギやヒノキの球果が、おおむね隔年で豊作と不作を繰り返すからだ。球果が多い年は果樹カメムシも山から出る必要がないが、球果が少ない年は餌を求めて山を飛び出さざるを得ず、果樹園などに飛来するというわけだ。  各地でカメムシが大量発生している理由について、溝部さんは今年が果樹カメムシ発生の「表年」に当たることに加え、斑点米カメムシと果樹カメムシ両方の共通要因として、梅雨前から気温が高く、梅雨明けも早かった点を指摘。「天気が良く雨が少ないと虫も病気になりにくく、気温が高いと生育も早くなる」と解説する。  カメムシは、農家以外の人にとっても洗濯物に付いたり、家の中にまで入り込んできたりする厄介な存在だ。中でも一般的なのが、果樹カメムシの一種のクサギカメムシで臭いも強烈。体長は13~20ミリ程度で、数十キロの距離を飛ぶ能力があり、11月ごろになると暖かい越冬場所を探し求めて山を飛び出し、住宅地にも姿を見せる。  害虫駆除なども手がけるダスキン(大阪府吹田市)によると、カメムシは白い色を好む傾向があるため、シャツやシーツなど白色の洗濯物を干していると寄って来やすくなる。2ミリ程度の隙間(すきま)があればくぐり抜けられるカメムシの室内への侵入を防ぐため、同社は網戸や窓の隙間をテープで塞いだり、侵入しそうな場所にあらかじめ殺虫剤を吹きかけたりすることなどを提案。カメムシが付きやすい草木を取り除いたり、カメムシが苦手なミントの苗を植えたりすることも効果的としている。【井上俊樹】

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