ガソリン 東北184円、12週連続上昇 「頑張って乗り越えられるレベルでない」消費者・企業から悲鳴

ガソリン価格の高騰が続き、暮らしや企業活動への影響が深刻化している。資源エネルギー庁が30日発表した東北の平均価格は12週連続して上昇し、過去最高値の184円を記録した。消費者や事業者からは「負担が大き過ぎる」「経営がきつい」と悲鳴が上がる。

 宮城県石巻市渡波でデイサービス施設を運営するNPO法人の理事長鈴木智子さん(61)は、仙台市青葉区の自宅から職場まで片道約65キロをマイカー通勤する。ガソリン代は月4万円に達し、倹約のため職場に泊まることもある鈴木さんは「ガソリンスタンドの価格表示はもう見たくない。消費者が頑張って乗り越えられるレベルではない」と嘆く。

 山形県の平均価格は5週連続で最高値を更新した。家族で乗用車2台を所有する山形市の団体職員の男性(49)は通勤などのほか、知的障害があり長井市の福祉施設で集団生活を送る三男(14)と定期的に会うため、自家用車を利用する。「家計は大ダメージを受けており、近場は自転車や徒歩で移動するようになった」と語った。

 消費者の節約志向は、ガソリンスタンドの経営にも影を落とす。秋田県内4市で給油所を10店舗展開する佐藤石油(大館市)によると、政府が補助金を段階的に縮小し始めた6月以降、ガソリンの販売量が減少しているという。

 同社の春日真一取締役(52)は「満タンにせず1000円分だけ給油する客も増え、経営は厳しい。乗用車の販売やリースなど、新たな収入の柱を確保することも検討したい」と危機感をにじませる。

 仙台市青葉区のあるガソリンスタンドでは、5月ごろから、エンジンオイルの交換やタイヤ販売などが伸び悩んでいる。男性店長(47)は「消費者は(必需品以外は)少しでも出費を先延ばししようという印象を受ける」とぼやく。

 ガソリンと同時に幅広く石油製品の値上がりが続き、産業界にも影響は広がっている。トラック12台を保有する運送業明成流通(仙台市宮城野区)の三浦浩社長(72)は、物価高に対応するため社員9人の給料を上げたばかり。燃料の軽油価格の上昇について「運送業はそもそも薄利。新型コロナ禍で減った仕事が戻らない中、燃油高は本当にきつい」と頭を抱える。

 漁業者も打撃を受けている。気仙沼港を母港とする遠洋マグロはえ縄船などが所属する宮城県北部鰹鮪漁業組合(気仙沼市)によると、遠洋船の燃料となる重油の価格は昨年に比べて約20%高く、1隻当たり年2000万円ほど負担が増しているという。

SafeFrame Container
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 勝倉宏明代表理事(55)は「漁船にとって油は生命線だ。国は燃油高騰対策の補助金をこれまで通り交付してほしい」と求める。

山形は最高値5週連続更新

 経済産業省が30日発表した28日時点のレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は、前週調査より1円90銭高い185円60銭となり、最高値を更新した。値上がりは15週連続。原油価格の高騰と円安進行に加え、政府が価格抑制のための補助を段階的に縮小していることが響いた。

 岸田文雄首相は30日、家計の負担軽減に向けた補助拡充について9月7日から段階的に実行し、年末まで支援を延長すると表明。「10月中には175円程度の水準を実現したい」と述べた。軽油や灯油、重油の補助も拡充。電気・都市ガス代を抑える補助金を当面継続する意向も示した。

 28日時点の価格は46都道府県で値上がりし、高知県のみ横ばいだった。最高は長野県の194円ちょうどで、鹿児島県の191円60銭が続いた。岩手県が180円90銭で最も安かった。

 比較可能な1990年以降で見ると、レギュラーガソリンの全国平均価格は2008年8月に付けた185円10銭がこれまで最も高かった。当時は中国での需要増に加え、大量の投機資金が市場に流入したことで高騰につながった。

 東北のレギュラーガソリンの平均小売価格は、前週に比べ2円30銭上昇し184円だった。12週連続で値上がりし、県別やブロック別の統計がある04年6月以降の最高値を更新した。

 これまでの最高値は08年8月に記録した183円20銭だった。県別の価格は表の通り。全県で上昇し、山形は最高値を5週連続で更新したほか、新たに秋田、福島で最も高い価格となった。

 ハイオクは2円40銭高い195円10銭、軽油は2円20銭上がり164円70銭。灯油(18リットル)は店頭2161円、配達2291円で、ともに35円高くなった。

 ガソリン価格を抑えるための補助金は原油相場の高騰を受け、22年1月に始まった。政府は補助を今年1月から段階的に縮小してきたが、9月末の期限切れを前に延長する方針を決めた。9月7日からの補助拡充で価格を180円未満に抑え、10月5日から年末までは175円を超えないように補助率を引き上げる。

 補助金額は基準に基づいて毎週決めており、経産省によると31日からは1リットル当たり9円70銭となる。補助がない場合の9月4日時点の価格を195円70銭と予測しており、補助金分を単純に反映させると186円になる計算だ。4日時点の価格は6日に公表する。

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