8月末の週末、東京都江戸川区の自宅から、自転車に乗って近所へ買い物に出かけたところ、曲がりくねった細い一般道で、車が長い列をなしているのが目に付いた。
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「何だろう? 」と思い、列の先まで行ってみて納得した。小規模のセルフガソリンスタンドで、レギュラーガソリンが1リットル149円で売られていたからだ。都内で目にするそれは150円台が多い。これは安い。ひっきりなしに車が出入りするうえ、空きを待つたくさんの車が道にはみ出していることが、渋滞の原因だった。
昨年後半からの円安や原油相場の上昇もあり、ガソリン価格は直近、昨年7月の140円前後を底に、ジワジワと上昇してきた。資源エネルギー庁が毎週発表する給油所小売価格調査によると、9月9日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格(店頭現金価格・消費税込み)は1リットル161.4円と、ここ2週間連続で値上がりしている。
1年前の全国平均価格は148円。足元では1割近く上昇している。直近、消費者物価指数は6~7月にかけて2カ月連続でプラスだが、上昇の寄与度が高いのが電気代とガソリン価格だ。
■ 千葉県と長崎県でガソリンは10円の差
小売価格調査から最高値と最安値の都道府県を調べると、最も高い県は長崎県でレギュラー1リットルが167円、最も安い県は千葉県で156.9円と、両県で10円の開きがある。
ただし、長崎県の価格の高さには注意を要する。「離島にあるガソリンスタンドの小売価格も平均値の中に含まれている」(資源エネルギー庁の調査委託先である日本エネルギー経済研究所・石油情報センター)からである。離島にガソリンへ運ぶには輸送コストがかかるため、小売価格も高くなる。そうした拠点の価格も含めて計算すると、平均値も高くなるというわけだ。2番目に高いのが鹿児島県だが、こちらも離島の小売価格が影響しているという。
一方、価格が安いのは、千葉県や(千葉の次に価格が安い)埼玉県。「スタンド数も多く、競争が激しい」(業界関係者)ことが背景にある。過去1年の価格推移を比べても、千葉県の平均価格は全国平均価格よりも3~5円安い。14日、千葉市内のセルフガソリンスタンドに立ち寄ると、レギュラーガソリンは現金価格で1リットル146円だった。これは千葉県の直近の平均価格よりも約11円も安い。おそらく県内でも最安値圏ではないだろうか。
ちなみに、日本エネルギー経済研究所では、調査対象としているガソリンスタンドは約2000カ所、1県あたり30カ所以上という数字しか公表していない。47都道府県に30をかけても1400程度。都道府県によってスタンド数の多寡があり、同業者の多いところでは自ずと競争も厳しくなるということだろう。
■ 都内、レギュラー1リットル176円でも大盛況のワケ
千葉県の安さとは正反対の場所が東京都内にある。「一度、朝方に見に行くといいですよ。車が列をなしているから」と業界関係者に教えてもらったのが、千代田区内のガソリンスタンドだ。13日の朝8時すぎにそこに行くと、確かにスタンドは車でいっぱいだった。スタンドに来るのはハイヤーとみられる高級車がほとんどで、空きができるとすぐに別の車が入り、朝から盛況だった。
スタンドを見回したところ、どこにでもある「レギュラー1リットル●●円」といった店頭の看板がない。サービススタッフの方に尋ねると、「値段表は出していません。今は、1リットル176円ですね。」と教えてくれた。値段の高さに驚いた様子でいると、「このあたりはあまりスタンドがないですから。近くだと、セルフスタンドがありますけどね…」とも話してくれた。東京の平均価格は163.1円だから、このスタンドは13円も高い。それでも切れ目なく車がガソリンを入れに来るのは、近隣にスタンド数が少なく売り手市場になっているからなのだろう。
8月はシリア情勢が緊迫化し原油相場も上昇していたが、それがいくぶん緩和されたことから、相場も下落に転じている。円安がこれ以上進まなければ、今後のガソリン価格はやや下がる可能性もある。
ただし、「1リットル150円という価格水準は、消費者の心理的な抵抗感が強まり、需要が減退しやすいレベル」(アナリスト)ともいわれるが、レギュラーガソリンの全国平均価格はとうにその心理的な”抵抗線”を突破した。リーマンショック前の2008年8月には、原油価格の高騰から全国平均価格が1リットル185円をつけたこともある。さすがにここまでの高騰はなさそうだが、家計にボディーブローのように効くガソリン価格上昇を受けて、ドライバーの価格感度がそう簡単に低下することはなさそうだ。