ガソリン車が絶滅の危機…世界の石油の半分を消費、地球温暖化に「多大な貢献」

●自動車は22億トンもの二酸化炭素を出す

地球温暖化防止で進展を見せた気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)の結論 は、21世紀の後半に二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにするというものだった。これは石炭、石油、天然ガスの化石燃料使用停止宣言でもある。そうなれ ば疑いなくエンジン車は絶滅する。

たとえば2013年度、国内運輸部門の排出した二酸化炭素は同全体の17.1%であった。自家用乗用車 に限ると同12.1%、1億870万トンである。決して少ない量ではない。ガソリン1リットルが燃えると2.32キログラムの二酸化炭素を排出するから、 1868万トンの二酸化炭素を排出するには、およそ80億5000万リットルのガソリンが燃えたことになる。これだけのガソリンを自家用乗用車で燃やして しまうのだから、地球が熱くなってもおかしくはないのかもしれない。

では、自動車全体ではどうか。12年の世界の運輸部門の石油消費量は およそ25億トンであった。その90%を自動車で使うとすると、世界の自動車が使った石油はおよそ22億5600万トンとなる。ちなみにこの年の世界の石 油消費量は42億500万トンである。自動車は世界の石油のおよそ54%を使ったことになる。

世界の石油消費の半分以上を自動車が占めるわけだから、当然のことながらそれが排出する二酸化炭素も大変に多い。ちなみに日本自動車工業会の発表では、07年の世界の自動車の二酸化炭素排出量は、およそ48億7000万トンであった。

では、自家用車所有者はどれほどの二酸化炭素を排出するのだろうか。実燃費がリッター15キロメートルの乗用車を月間1000キロメートル、年間1万 2000キロメートル乗ったとすると、使うガソリンは800リットルで二酸化炭素の排出量は1856キログラムとなる。自家用車のオーナーは毎年2トン近 い二酸化炭素を排出しているわけで、地球温暖化に無関係どころか、大いに影響を与えている。

以上を踏まえると、もし自動車の燃料を脱化石燃料化すれば、世界全体の二酸化炭素排出量のうち23%、およそ48億7000万トンは減らせるわけであり、石炭、石油、天然ガスの使用をやめると宣言したCOP21は、エンジン車を絶滅種に指定したわけだ。

●エンジンの復権

しかし、そうはさせまいとエンジン(内燃機関)技術者はがんばる。まったく二酸化炭素を出さないか、あるいはカーボン・ニュートラルな燃料を使えばエンジンは生き残れると。

たとえばロータリー・エンジンの復活を宣言したマツダは、バイオ燃料の研究に熱心である。バイオ燃料は生物由来の燃料であり、生物は空気中の二酸 化炭素を体内に取り込んでいるので、燃やしても二酸化炭素は増えない。カーボン・ニュートラルである。ロータリー・エンジンは、バイオ燃料で復活させるに 違いない。

ところで、バイオ燃料の取材で宮古島を訪れた時のことだった。サトウキビからアルコールを抽出する工場を見学させてもらったのだが、宮古島のサトウキビを全部バイオ燃料にしても、走らせられる自動車は島にある自動車だけだと聞いて、考えさせられた。

バイオ燃料は食料とのバッティングを避けなければならないのだが、サトウキビに関してはそればかりかアルコール抽出に伴う廃液の処理が大きな問題である。自動車の脱石油化は一筋縄ではいきそうにない。

注目の燃料電池車も電気自動車も、火力発電所の電力を使って水素を製造したり充電する限り、実質的には二酸化炭素を排出する。発電もカーボンフリーなエネルギーでなければならない。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)

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