ガソリン車の燃費、「1リットルあたり30キロ以上」が常識に

ガソリン車の燃費がどんどん良くなっている。マツダが6月に発売した「デミオ」はガソリン1リットルあたり30キロメートル、ダイハツ工業が20日発表した軽自動車はなんと32キロメートルも走るという。どちらもハイブリッド車並みか、それ以上だが、なぜ今、燃費競争なのか。
 「いやあ悔しい。ダイハツがうちを超えるそうだ」
ガソリン車の燃費競争が激しさを増している(写真はダイハツの「ミラ・イース」
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ガソリン車の燃費競争が激しさを増している(写真はダイハツの「ミラ・イース」
 マツダの技術者が食事をしながらこうつぶやいたのは、7月だった。デミオはモーターもリチウムイオン電池も積んでおらず、純粋なガソリン車だ。1リットルあたり30キロメートルの航続距離は画期的で、売れ行きも好調だが、「ガソリン車最長」の栄誉は長くは続かなかった。
 ダイハツが売り出した「ミラ・イース」は「10・15」という一般的な燃費測定方法で1リットルあたりの航続距離が32キロメートルにまで伸びた。特別な技術や仕掛けはない。ただ、部品点数を減らし、材料を見直し、ガソリンが燃える時のムダを極力なくした結果だという。
 ダイハツの伊奈功一社長は「ガソリンエンジンは燃料を燃やして出る熱量の25%しか動力に生かせていない。この比率を技術でどこまでよくできるかの勝負だ」と話す。
 だから、しのぎを削っているのは、2社だけではない。ダイハツの次は三菱自動車、その次はトヨタ自動車やホンダ、日産自動車も超低燃費の新型車を開発中で、ダイハツの最長記録も長期間安泰というわけではなさそうだ。
 「特別な技術はない」と言った。だが、それは「簡単にできる」と言いたいわけではない。マツダもダイハツも、細かい工夫を積み重ね、それらを組み合わせて偉業をなし遂げた。それはそれで技術革新である。
 例えば、デミオは停車した時のアイドリングストップや効率の良い変速機を採用している。エンジンは、ガソリンを燃やす内部の部屋を縦に長くし、ピストンの上下運動を長くした。それによって、燃焼の効率は上がるのだという。
 では、こうした努力が求められるようになった背景は何だろう。2つ考えられる。
 まずは、新興国戦略。最近はなんといっても、先進国市場を規模で追い抜いた新興国市場でいかに売るかが至上命題だ。そこでは、最先端の技術を駆使したハイブリッド車や電気自動車は高くてなかなか買ってもらえない。だから、既存技術を突き詰めた低価格で低燃費なガソリン車が、カギを握るようになる。
 もうひとつは先進国戦略だ。日米欧ではいずれも燃費規制が今後4~5年で厳しくなる。日本では2020年度までに09年度に比べて24%の燃費改善が義務付けられるほか、米国では企業ごとの平均燃費が25年までに1リットルあたり23キロメートル(乗用車)と2倍になる見通しだ。
 だから、今後はハイブリッド車や電気自動車も燃費効率をさらに上げていく動きが活発になりそうだ。すでにトヨタや日産などの間では低燃費競争が水面下で進んでおり、来年か再来年あたり、1リットルあたり50キロメートルも100キロメートルも走るハイブリッド車が出てくる可能性がある。

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