京都大と藤田医大(愛知県)などの研究チームは30日、ヒト由来の胚性幹細胞(ES細胞)から拒絶反応を起きにくくした免疫細胞「キラーT細胞」を人工的に作り、新型コロナウイルス感染症の治療に使う新たな治療薬の開発に成功したと発表した。
抗がん剤治療で免疫不全状態になり新型コロナが重症化した患者を対象に臨床試験(治験)を計画。チームの河本宏・京大教授は、3年後には実施したいとしている。既に特許出願したという。
今回はウイルス感染した細胞を攻撃するキラーT細胞を活用した。通常よりも拒絶反応を起きにくくしたES細胞からキラーT細胞を作製。新型コロナウイルス特有のタンパク質を認識させる遺伝子を導入し「センサー」に当たる機能を持たせた細胞を作った。
この細胞を、新型コロナ感染を人工的に再現した細胞と一緒に培養したところ、12時間後には感染を再現した細胞の約9割が死滅したという。
臨床試験に当たっては、マウスを使った動物実験での安全性確認などを経る予定としている。
免疫不全状態の人が新型コロナに感染した場合、通常よりも長期間にわたりウイルスが排出されるケースがあることが知られている。