キリンビール仙台工場が半年ぶり再開

■「農家に感謝」11月上旬に店頭へ
 キリンビールは26日、東日本大震災で貯蔵タンクが倒壊するなど甚大な被害を受けた仙台工場(仙台市宮城野区)で、約6カ月ぶりにビールの製造を再開した。再開後の初仕込みは、同じ被災地でもある岩手県遠野市産のホップを使用した「一番搾り とれたてホップ生ビール」で、11月2日に出荷、同9日にも店頭に並ぶ見込み。
 「とれたてホップ」は、契約栽培する遠野ホップ農業協同組合が8月下旬から9月上旬にかけて収穫したホップを使用。ホップを乾燥させず生のまま凍結させ、粉砕して仕込むことで華やかな香りが楽しめるという。
 例年なら9月10日前後に仕込みを始めるため、松沢幸一社長が4月の記者会見で、「例年通り仕込めるように」と製造再開の目標に言及。約2週間遅れとなったが、この日の初仕込みにこぎ着けた。
 製造再開を祝う初仕込み式で、高橋尚登(なおと)生産本部長は「ぜひ東北産のホップを使用して生産したいと取り組んできた。栽培農家も苦労したと思うが、お礼を言いたい。宮城の地でビールを作れることを誇りに思う」と感慨深げに語った。
 遠野市の本田敏秋市長は「農家が懸命に取り組み、今年も良質なホップができた。笑顔が取り戻せるようなビールが製造できる。復興への力強い出発点になれるという思いで仕込みたい」と話した。
 この後、麦汁を煮立てた仕込み釜に、本田市長や高橋生産本部長、横田乃里也(のりや)工場長らが凍結ホップを投入し、本格的な製造工程に入った。試運転中の缶や樽(たる)に詰める工程を10月下旬には稼働させ、11月2日に震災後初めての出荷、同9日の店頭販売につなげる。
 「とれたてホップ」と同時期に発売する「氷結アップルヌーヴォー」1本につき1円、「メルシャン 福島県会津地方新鶴地域の地ワイン新酒白2011」1本につき10円を復興支援に充てる。
 仙台工場は震災で貯蔵タンク4基が倒壊したほか、350ミリリットル缶換算で約1700万本分の缶やビン、ケースが散乱し、土砂やゴミで埋まった。4月上旬から従業員や関係会社の社員が片付け作業を始め、設備の交換や洗浄、製造工程の点検などを進めてきた。
 約50億円をかけて、生産能力は震災前の6割程度まで回復。横田工場長は「震災直後には想像できなかったが、よくここまで復旧できたという思い。震災から1年後には通常の製造態勢に戻したい」と語った。

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