クマの人的被害、東北で拡大中 岩手は過去最多を更新 秋のレジャーはご注意を

クマ

ツキノワグマによる人的被害が東北で増えている。昨年度、全国で最も多かった岩手県では本年度、件数、人数とも既に過去最多を更新した。キノコ採りや紅葉狩りなど秋のレジャーが本格化し、被害はさらに拡大する恐れもある。県は人の存在を知らせる鈴の携行など対策を呼びかける。(盛岡総局・土屋聡史)

 県によると、県内の人的被害は7日時点で32件(33人)に達している。3日は岩手県雫石町の山林や岩手県八幡平市の畑で、キノコ採りや栗拾いなどをしていた70代男性3人が襲われ、顔や腕にけがを負った。7日は岩手県大槌町の牛舎で作業中の50代女性が頭や顔をかまれた。

 8月には2009年以来の死者も出た。一戸町の80代女性が自宅裏の山林で襲われ、頭部などを爪で引っかかれた。死因は外傷性ショック。発見時、女性は意識があり「クマ、クマ」と繰り返していたという。

 統計が残る1993年度以降で、被害が最も多かったのは2020年度の27件(29人)だったが、本年度は今月3日にそれを上回った。18年以降は12~27件で推移していて、昨年度は23件(24人)と件数、人数とも全国最多となった。

岩手は人里とクマ生息域が近い

 人里とクマの生息域が近い岩手の地理的特性が要因とみられ、県自然保護課の担当者は「人的被害の件数が毎年、2桁の都道府県は極めて少ない」と話す。

 昨秋、餌となるブナの実の生育がよく、栄養を十分蓄えた母グマの出産が順調だった一方、今秋はブナの実が凶作で餌を求めて人里に下りてきていて、遭遇率が高まったとみられる。

鈴の携行など対策呼びかけ

 県は「クマ警報発表中!」と書いた名刺大のカードを初めて作成し、入山者や山あいの農家に配布。(1)鈴などで常に音を出す(2)果樹は早めに収穫する(3)生ごみや家畜の餌などを屋外に置かない-などを周知する。

 14日は岩手大ツキノワグマ研究会と合同PRイベントを岩手県盛岡市で開く。「失明など深刻な影響が残る顔や頭を最優先で守る」など、岩手医科大から学んだ対策を学生たちが解説する。

 県自然保護課の担当者は「キノコ採りや紅葉狩りは静かに楽しむものだが、鈴やラジオで音を出し、人の存在を知らせることが必須。いつでもクマと遭遇する可能性があることを意識してほしい」と強調する。

 東北では、秋田県でも本年度の人的被害が6日時点で31件(31人)に上っている。6月に2件の人的被害があった宮城県では、秋になり目撃情報が増えてきたとして、県が9月1日に解除したクマ出没注意報を今月4日、再び発表した。

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