クルーズ船、老舗旅館…新型コロナで相次ぐ倒産 金融機関は特別融資も

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、観光や飲食業を中心に中小企業の倒産が全国に広がっている。

 インバウンド(訪日外国人客)の訪日キャンセルや国内での外出控えによって、クルーズ船や老舗旅館などが資金繰りに詰まり、経営破綻に追い込まれた。金融機関は特別融資で支援を急ぐが、出口の見えない感染拡大は企業経営にまで猛威を振るっている。(岡本祐大)

相次ぐキャンセル引き金

 国内最大級のレストラン船「ルミナス神戸2」を運航するルミナスクルーズ(神戸市)は2日、神戸地裁に民事再生手続き開始を申し立てたと発表。「1月以降新型コロナウイルスの余波とみられる多数のキャンセルが発生した」とコメントした。

 帝国データバンクによると負債額は約12億4300万円。平成30年以降の地震や台風で運航中止が続いたほか、燃料費の高騰で業績が悪化。資金繰りに苦しんでいたところを新型ウイルスが直撃した。

 また、愛知県蒲郡市の温泉街にある老舗旅館「冨士見荘」は2月中旬に廃業。主力だった中国からの団体客のキャンセルが相次いだことが原因という。経営者は「大切な旅館だが、客がいなくてはどうしようもない」と話した。緊急事態宣言が出ている北海道でもコロッケを製造する北海道三富屋(栗山町)が集客不振などを理由に破産した。

「経験ない落ち込み」

 インバウンド消費に支えられてきた観光、飲食業界だが、政府のイベント自粛、小中高の休校要請などによる外出控えが直撃している。神戸市内で飲食店を経営する女性は「今までに経験がない売り上げの落ち込みだ」と明かす。2月は例年に比べて3割減といい、「休校で子供のいる従業員が集まらず、時短営業せざるを得ない。今月の売り上げは半分以下になるだろう」と天を仰いだ。

 急速に資金繰りが悪化する中小企業を、地銀は特別融資で支援する。多くの観光関連企業を顧客に抱える京都銀行は特別融資の枠を拡大。上限額は5千万円から3億円に、期間も5年から10年に広げた。宿泊や飲食以外にレンタル着物店、土産物店などから2月末までに相談だけで200件以上、融資決定は80件を上回った。同行は「時間の経過とともに事業活動へのインパクトが大きくなってきている」とし、返済計画の見直しにも対応している。

 奈良県が地盤の南都銀行も2月19日から特別融資を開始。「観光、サービス業に加え、製造業への影響が表面化してきた。全力を挙げて支援する」(橋本隆史頭取)構えだ。そのほか、関西みらい銀行も特別融資で地元企業の資金繰りの悪化に対応を進めている。

不良債権化に懸念も

 金融庁は2月28日、全国銀行協会など関係団体に対して「丁寧かつ親身になって経営相談に乗る」よう対応を求めた。

 金融機関の支援について日本総合研究所の若林厚仁・関西経済研究センター長は「業績が落ち込む中で緊急融資は大きな支えになる」と評価。ただ、新型ウイルスの感染拡大は収束の見通しがたっておらず、「一時的な落ち込みであれば業績は回復するが、長期化すると不良債権化しかねない。銀行の目利き力が問われる」と指摘している。

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