本マグロ(クロマグロ)の刺し身として売られているメジマグロを食べないよう水産庁が呼び掛けた、という報道が最近ありました。メジマグロはクロマグロの子どもで、クロマグロの漁獲量全体の99%を占めるそうです。水産庁はクロマグロ減少に危機感を持っているようですが、寿司のネタとしてもおなじみのクロマグロが食べられなくなる日は近いのでしょうか。
国際機関「北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)」の調査によると、1950年代に約13万トンだった産卵能力のある親魚の資源量が、2010年には2万トン程度まで減少したことが判明。同委員会は、漁獲量削減などの強力な資源回復策の導入を関係漁業国に勧告する報告書をまとめました。
クロマグロは太平洋と大西洋に生息している全長3メートルの大型回遊魚です。折からの世界的な日本食ブームで需要が増大した結果、乱獲が進んで資源量が急減。大西洋のクロマグロについては、すでに厳しい漁業規制が実施されています。
厳しい漁業規制を導入か
太平洋クロマグロの国際的な漁業ルールは、資源管理機関である「中西部太平洋まぐろ類委員会」によって決められます。同委員会は9月2~5日に開く会合で2014年のルール案を決め、年末に開く総会で正式決定することになっています。ISCの勧告を受け、太平洋クロマグロについても、厳しい漁業規制が導入される可能性が高まっています。
クロマグロの資源枯渇の危険性は、かねてから認識され、関係国は「漁獲量を2002~2004年の水準より増やさない。未成魚(3歳以下)の漁獲を同水準より減らす」という暫定措置を決めていました。しかし日本の漁獲量は増え続け、2011年には前年比の1.5倍に拡大しました。最大の漁獲・消費国である日本には厳しい目が向けられることになりそうです。
そうした批判を和らげ、国際的な規制作りを主導するため、日本は未成魚の2014年の漁獲量について「2002~2004年の水準より少なくとも15%下回る水準に各国が削減する」よう関係漁業国に提案したことが明らかになりました。この方針を、ルール案を議論する際のたたき台にしたい考えです(8/17付、時事通信)。
しかし、想定以上に厳しい漁業規制が課されることも考えられます。もしそうなった場合、「クロマグロが食べられなくなるのでは」と心配する向きもありますが、すぐにそうなる可能性は低そうです。
輸入や養殖に期待
実は、厳しい漁業規制の成果で、大西洋ではクロマグロの資源量が回復しており、2013年は漁獲枠が10年ぶりに引き上げられました。漁業規制は消費を規制するものでないため、他国で水揚げされたクロマグロを輸入することができます。
また、養殖マグロは規制対象には含まれません。以前は、クロマグロの完全養殖は不可能と考えられていましたが、2002年に近畿大学が卵からの完全養殖に成功、昨年から商業化が開始されました。農水省も卵から稚魚を育てる取り組みをスタートさせており、これらの技術が広まれば、高級魚であるクロマグロを安くたくさん食べられるようになる期待も持てます。