ブリは1キロ60ベクレル、マダラは47.3ベクレル――。スーパーで販売された魚に含まれる放射性セシウムの数値を表示した環境保護団体のチラシが、分かりやすいとネット上で話題だ。
「スーパーのかわりにグリーンピースが放射能測定しました」。チラシには、このようにうたってある。どの魚も規制値をかなり下回る。
ブリは1キロ60ベクレル、マダラは47.3ベクレル
分かりやすいと評判に
分かりやすいと評判に
グリーンピース・ジャパンでは、2011年9月8日から11月8日まで、三陸・関東両地方で2回に分けてスーパー大手5社の抜き打ち調査を行った。チラシは、調査の結果をまとめ、魚の種類ごとに線量を表示している。
そのうち消費者の関心が高いのは、どこで漁獲されたかが分かりにくい回遊性の魚だ。最も線量の高かったブリは、ダイエーで販売されていた岩手産だった。また、次に高かったマダラは北海道産で、ユニーで販売されていた。続いて、マイワシ・マアジが23ベクレル、カツオが22ベクレルなどとなっている。
いずれも規制値の500ベクレルの10分の1以下に留まっている。不検出とされた魚もかなりあった。
とはいえ、小さな子どもがいる家庭では、こうした低濃度汚染の魚についても不安があるかもしれない。グリーンピースの調査結果は、どこまで本当だと言えるのか。
水産庁がサイト上で公開している放射性物質調査結果を見ると、ブリについては、9月16日に岩手県沖で獲れたものが50ベクレルを示すなど比較的高い数値を示している。また、マダラも12月13日に青森県沖・北海道沖で獲れたものがそれぞれ62、53ベクレルとなるなど同様に高い。
これからすると、グリーンピースの調査は、あながち誇張とばかりは言えないようだ。
水産庁の漁場資源課では、「まだまだ規制値よりはるかに低い」としながらも、魚類の数値が高くなったわけを次のように説明する。
回遊魚や底物は、放射性物質の影響
「ブリやマダラなどの回遊魚は、冬場に県境を越えて南下することもあります。また、放射性物質は重く、底に沈むので、マダラのような底物は影響を受けやすいかもしれません。高次捕食者の場合は、体内に濃縮している可能性もあります」
放射性物質としては、ストロンチウムの影響も心配されている。これについて、水産庁の漁場資源課ではこう言う
「500ベクレルのセシウムには、ストロンチウムが10分の1から100分の1ほど含まれているとされています。それで、セシウムの検査で判断しているわけです。実際、ストロンチウムの検査には1か月ほどかかり、鮮魚ですので結果が出てからでは意味がありません」
ただ、魚種を指定した検査はしており、問題になったケースはないという。
実は、グリーンピースによる抜き打ち調査結果は、チラシの裏面にあったもので、表面には、スーパーの放射能対策を独自に採点したランキングが掲げられている。11月24日に発表したもので、評価の高いものからイオン、イトーヨーカドー、ダイエー、ユニー、西友の順になっていた。
チラシは、最も評価が低かった西友に考え直してもらおうと、2011年11月30日に西友本社に近い東京・北区のJR赤羽駅で700部ほど配布したものだという。
ちなみに、イオンは、独自に放射性線量検査をして、線量が検出された魚は原則販売を見合わせる措置をこの秋から行っている。一方、西友は、線量検査はしていないものの、12月下旬から漁獲水域のラベル表示を関東・東北エリアの店舗で行うとしている。